1988 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解赤外分光システムの開発と光化学反応中間体への応用
Project/Area Number |
62470014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
濱口 宏夫 東京大学, 理学部, 助教授 (00092297)
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Keywords | 時間分解 / 赤外分光 / フタロシアニン / 三重項励起子 / ポリアセチレン / ソリトン |
Research Abstract |
マイクロ秒の時間分解能を持つ時間分解赤外分光システムを完成した。このシステムは本補助金によって購入したcwQ-スイッチNd:YAGレーザー、分散型赤外分光光度計、MCT赤外線検出器、ボックスカー積分器、パーソナルコンピューターから構成される。これらを組合わせることによって、時間分解能1マイクロ秒、波数掃引範囲4000〜700cm^<-1>、検出感度△A=0.0001、波数分解能5〜60cm^<-1>の性能が得られた。このシステムを、フタロシニン微粒子の薄膜およびトランス-ポリアセチレン膜の光誘起ダイナミックスの研究に応用した。フタロシアニンでは光励起によって生成する三重項励起子の構造とダイナミックスに関する情報が得られた。とくに三重項励起子の減衰曲線から、項間交差による単分子的減衰とT-T消滅による二分子的減衰の相対速度が得られ、これから結晶中の三重頃励起子の拡散速度に関する見積りが得られた。ポリアセチレンについては光誘起荷電ソリトンの減衰が温度によって著しく異なる挙動を示すことが見出された。この結果から、1.荷電ソリトンはトランス・ポリアセチレン鎖間に光吸収によって生成するポラリトン対から正負の荷電ソリトン対として対生成し2.低温では動けずにgeminateの再結合によって消滅し、3.高温では自由に動きまわって二分子反応的に減衰するというモデルが導かれた。このモデルはこれまで実験的に知られていた光電気伝導の温度依存性を良く説明し、荷電ソリトンによるアセチレンの電気伝導機構を強く支持する。以上の結果から本研究によって製作した時間分解赤外分光システムが、マイクロ秒の時間領域での光誘起ダイナミックスの研究に極めて有効であることが示された。
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[Publications] K.Iwata;C.Kato;H.Hamaguchi: Applied Spectroscopy. 43. 16-19 (1989)
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[Publications] K.Iwata;H.Hamaguchi: Chemical Physics Letters,.
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[Publications] K.Iwata;H.Hamaguchi: Review of Scientific Instruments,.