1987 Fiscal Year Annual Research Report
毒素原性大腸菌の産生する耐熱性エンテロトキシンの高次構造と毒性発現
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62470022
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下西 康嗣 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (00029951)
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Keywords | 毒素原性大腸菌 / 耐熱性エンテロトキシン / ジスルフィド結合 / 毒性発現構造 |
Research Abstract |
熱帯地方の発展途上国への旅行者が往々患う急性の下痢, いわゆる旅行者下痢は毒素原性大腸菌の感染が主な原因とされている. これまでに, 毒素原性大腸菌の病原因子の1つである耐熱性エンテロトキシン(ST)は, 筆者らと欧米の研究者によって, 19及び18個のアミノ酸残基からなる2種存在することが明かにされた. また, Yersinia enterocolitica,Vibrio cholerae nonー01,Vibrio mimicusから分離されたSTについても, それらのアミノ酸配列が明かにされている. 本研究では, 1)これらのSTは分子内ジスルフィド結合をした6個のCysを含む13残基のアミノ酸配列によって形成される立体構造が毒性発現に重要であることから, ジスルフィド結合を選択的に結合させて, STを化学的に合成し, 合成STと天然STとの性質を比較するという合成化学的な方法によって, 毒素原性大腸菌の産生する2種のST,Y.enterocoliticaのST, V.cholcrae nonー01のSTの計4種のSTの分子内ジスルフィド結合の位置を決定した. そして, 全てのSTは同じ架橋様式をもったジスルフィド結合をもっていることを明かにした. 2)STは分子内に存在する3個のジスルフィド結合によって安定化された構造をとっていると考えられるが, 3個のジスルフィド結合のうち, いずれがSTの立体構造すなわち毒性発現構造に重要であるかを明かにするため, 3個のジスルフィド結合のうち1個または2個のジスルフィド結合をもつ多数のアナローグを合成し, それらの毒性を調べた. その結果, 3個のジスルフィド結合のうちの特定の1個が欠落すると毒性を示さないこと, すなわち, このジスルフィド結合がSTの毒性発現に必要な立体構造を形づくる上で最も重要であること, また, STの毒性発現には, この特定のジスルフィド結合ともう1個のジスルフィド結合が必要であることが明らかになった.
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Yuji Hidaka: Bulletin of the Chemical Society of Japan. 61. (1988)
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[Publications] Shinji Yamasaki: Bulletin of the Chemical Society of Japan. 61. (1988)
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[Publications] Shinji Yamasaki: Proceedings of the 2nd Akabori Conference-German Symposium on Peptide Chemistry. (1988)
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[Publications] Yuji Hidaka: Peptide Chemistty 1987. (1988)