1988 Fiscal Year Annual Research Report
ベッコウバチを中心とした狩人蜂毒液麻酔成分の構造と合成の研究
Project/Area Number |
62470028
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
奥村 保明 静岡大学, 理学部, 教授 (20021933)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入川 肇 静岡大学, 理学部, 助手 (40021943)
桜井 厚 静岡大学, 理学部, 助教授 (70021938)
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Keywords | ベッコウバチ / 孤立性狩人蜂 / 麻酔性蜂毒 |
Research Abstract |
本年度も引き続きベッコウバチの採集を行い過去最高の約1200匹を採集し、トヨパールHWー40Fカラムを用いて12個の粗画分に分画した。これらの粗画分について活性の検討を行ったが、従来行ってきたカエル脊髄神経を用いる試験法は定量性は高いが、試料を多量に必要とし、ミールウワームを用いる方法は簡便であるが、再現性が低く定量性も低いので、より小量の試料で定量性の高い神経活性試験法の検討を行った。その結果本年度よりラット海馬神経細胞を用いた活性試験法を採用することとした。グルタミン酸受容体に対する拮抗阻害を指標とする活性試験では粗毒が興奮の後に続く弱い抑制作用を示すのに対して、粗画分VIIが弱い抑制作用を示した。これに対して自発発射に対する作用を指標とする活性試験では、粗毒は強い興奮作用が顕著であった。粗画分については、画分II及びIIIが興奮作用を示し、画分VII,IX及びXが抑制作用を示した。この結果は毒の作用がグルタミン酸受容体に対する阻害による抑制作用とは異なり、興奮による脱分極作用である可能性を示している。これらの粗画分について、マルチチャンネル検出器を用いた高速液体クロマトにより分析を行うとともに、YMCーODSカラムを用いてさらに分画を進め、活性試験により試料を消費する前に可能な限り非破壊的に構造に関する知見を得ることを優先して行うこととした。粗画分IIIより、プロトンNMRスペクトルからニコチン酸の3ーメチルピロリジン誘導体と見られる物質が微量単離された。粗画分IXより海馬神経細胞の自発発射の頻度と大きさを増加させる物質が微量であるが単離され、アミノ酸分析の結果、フェニルアラニンとアルギニンが1:3の比で含まれることが判明したので、配列決定と合成を引き続いて行う。いずれの活性試験においても抑制作用を示す粗画分VIIを今後精製して構造決定と合成を行う予定である。
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