1987 Fiscal Year Annual Research Report
銀イオン交換ゼオライトにおける特異的触媒機能の発現に関する研究
Project/Area Number |
62470072
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小野 嘉夫 東京工業大学, 工学部・化学工学科, 教授 (10016397)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 栄一 東京工業大学, 工学部・化学工学科, 助手 (90183417)
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Keywords | 銀交換ゼオライト / 水素効果 / 酸触媒作用 |
Research Abstract |
交換率を変えたAg交換Y型ゼオライト(AgY)を調製し, 酸触媒反応に対する水素の共存効果を調べた. 反応としては, エタノールの脱水反応および0ーキシレンの異性化反応を行なった. 主な結果は次の通りである. (1)水素の分圧の増大にともない, 両反応の速度は増大する. アルコールの脱水反応においては, オレフィンの生成に対してのみ水素の共存効果は顕著であって, エーテルの生成に対しては水素共存効果はほとんどみられない. (2)水素の共存効果は可逆的であり, 系から水素を取り除くと活性は低下するが, 水素の再導入により活性は回復する. (3)AgYにおけるAgの含有率が高いほど, 水素による活性増大効果は顕著である. 以上の実験事実は, 気相H_2分子とゼオライト表面のH^+との間に相互変換の機構が存在するものと結論した. また, この相互変換にはAgのクラスターイオンAg^+_nが関与していることを推定した. 事実, 気相にH_2に変えて, D_2を導入すると, ゼオライトの酸性OH基が減少し, 代わって, 酸性OD基が生成することが赤外吸収スペクトル法により確認された. 水素共存下におけるAgYの触媒活性はHYの触媒活性より高い. また, HYでは水素の共存効果はみられない. 一方, 反応条件下での水素の吸着量は小さく, 酸性OH基の量にくらべてずっと少ない. したがって, 反応に関与するプロトンは極めて活性が高いものであり, 通常の酸性OH基は反応に直接関与しないものと結論した. 水素の共存による触媒活性の増大は, L型ゼオライトによるキシレンの異性化やA型ゼオライトによるlーブテンの異性化においても観測されている. これらの事実は, 水素の共存効果はAgー交換ゼオライトによる酸反応に共通してみられる現象であることを示唆しており, 活性増大にAgクラスターが関与するとの推論を支持するものである.
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