Research Abstract |
石油化学工業の基幹原料である低級オレフィン類は, 現在石油のナフサ留分の高温熱分解による非選択的な方法で製造される. 石油危機後, 石油代替資源である石炭を出発原料として, メタノールを経由してオレフィンを合成する触媒の開発が各国で進められてきたが, それらはすべていわば高温法というべきもので, 550〜600℃の反応温度で, ある程度重合した炭化水素類を接触分解する方法であるので, 固体酸点上の炭素鎖切断の法則(βー開裂)に従い, 主生成物はプロピレンとなり, 最も必要とされるエチレンの収率は極めて低いものとなる. 本研究では, これらの従来法とは根本的に異なり, 300℃以下の低温で, メタノールから生成するメチレン基が2箇ないしは3箇低重合したところで反応が終るような触媒開発を行う点にある. すなわち酸素10員環の開口をもち, しかもこれが3次元的に連結していて, コークの生成が極度に抑制される構造をもち, しかも固体酸点の強さと性質が, 上記の目標に適うものを, 各種の遷移金属イオンを結晶内に取り込んだメタロシリケートを合成して達成しようとするもので, 本年度は, 独自に開発した迅速結晶化法により検討し, 鉄,コバルト,ニッケルなどの鉄族金属を取り込んだメタロシリケート群が, 極めて選択的にメタノールからエチレンとプロピレンを生成することを明らかにした. しかも, この触媒性能は, 組成は同じでも, 結晶合成時の金属イオンの濃度因子などに強く影響を受けることを見い出し, これは, 結晶内の金属イオンの分布状態に依存することを突き止めた. しかし, これらの鉄族金属メタロシリケートは, 活性が比較的小さいので, 結晶性触媒の範囲を拡げて検討するため, ゼオライト様結晶構造を有するシリコアルミノフォスフェート結晶の迅速結晶化を試み, さらにこれに鉄族金属を結晶合成段階に含有させた. これらの触媒は, シリケート結晶触媒とは甚だしく異なる反応挙動を示した.
|