Research Abstract |
高純度,超精密加工製品の製造工程で,製品の歩留まり向上や安全性を保つために,高度な清浄空気を必要とする空間が増えつつある. このような清浄空間を作り出す担い手は超高性能エアフィルターである. クリーンルームで使用される超高性能フィルターは, 繊維径が0.7μm前後の極微細ガラス繊維層であり,厚みや充填率を増すと希望の粒子捕集効率は容易に達成されるが, 同時に圧力損失も増加する. 本研究では,圧力損失を低く抑えたまま高捕集効率を達成できるような内部構造をもつフィルターの開発を目指している. そのために本年度ではまず,このような省エネルギー型超高性能フィルターの集塵性能の指標である粒子透過率Pの対数と圧力損失△pの比I=lnP/△pを定義し,(i)繊維径を小さくした場合,(ii)繊維の配列を変えた場合,(iii)帯電繊維を用いた場合,の三種類について,I値を向上させる方法を検討した. その結果,(i)については,平均繊維径を従来の0.7μmから0.2μmまで細くすると, 理論的にはI値は1.5〜2倍程度になることが予測されたが, 実験では, その傾向が顕著に現れなかった. その原因の一つに繊維径測定の精度が挙げられるが, 次年度もこの点について検討する. 次に(ii)の繊維配列の影響について,繊維が空気流れにほぼ平行に配列されているタバコフィルターを束めて作成した繊維層と, 全く同じ材質,厚さ,充填率をもち空気の流れに直角に配列したフィルターを比較したところ,粒径0.1μm以下の拡散捕集支配域では, 平行配列の方がI値が大きく,性能的に優れていることがわかった. さらに(iii)の帯電フィルターについては,繊維表面で永久分極を起しているエレクトレットフィルター(繊維径1.3μm)を用いて実験を行ったところ,I値は無帯電粒子の場合でも10倍以上の値を示し,初期集塵性能が極めて優れていることが明らかとなった. 次年度以降,以上の点についてさらに詳細な検討を行う.
|