1988 Fiscal Year Annual Research Report
放線菌の気菌糸誘導物質と抗生物質生産制御に関する研究
Project/Area Number |
62470125
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
丸茂 晋吾 名古屋大学, 農学部, 教授 (30023394)
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Keywords | 放線菌 / 気菌糸 / 気菌糸誘導物質 / 抗生物質生産 / カルシウムイオン |
Research Abstract |
1.放線菌の気菌糸誘導物質としてのカルシウムイオン 多数の放線菌について気菌糸形成を誘導する活性物質について検討した結果、数菌株の培養液中に気菌糸形成の誘導物質が存在することを見出した。このうちS.ambofaciensの気菌糸誘導物質を精製・単離し、酢酸カルシウムと同定した。カルシウムイオン(Ca^<2+>)はもともと培地に添加された炭酸カルシウムが、菌の生育に伴う培地の酸性化によって可溶化したものと結論した。そこでCa^<2+>の気菌糸誘導物質におよぼす効果を36菌種の放線菌について調べた結果、19%の菌種の気菌糸形成がCa^<2+>によって誘導または促進され、58%の菌種の気菌糸形成がCa^<2+>の特異的キレート剤EGTAによって阻害されることを見いだし、カルシウムイオンが広く放線菌の気菌糸形成に関与していることを明らかにした。 2.放線菌の気菌糸誘導物質と抗生物質生産 先に単離したpamamycin群化合物と今年度新たに見出したS.venezuelaeの気菌糸誘導物質の抗生物質生産におよぼす影響について調べた。S.albonigerの気菌糸を形成している正常株及びその気菌糸欠損変異株、また欠損株にpamamycin-607を与えて気菌糸を誘導したそれぞれの培養物の抗菌活性を、Staphylococcus aureusを被検菌として調べたが、3者の間に顕著な差は見出せなかった。またpuromycinの生産量をHPLCを用いて定量したが、気菌形成との相関関係は見られず、puromycinの生合成は基中菌糸において行われると考えられた。一方S.venezuelaeの気菌糸誘導物質は予備的精製の結果、アセトンやメタノールに不溶で、活性炭に吸着されない極性の大きな水溶性物質であることが判った。本活性物質を与えて気菌糸を誘導した培養物は明瞭な抗菌活性を示したのに対し、添加しなかった基中菌糸のみの培養物は活性を示さず、本菌の気菌糸形成と抗生物質生産との間には密接な関係があることが明らかとなった。
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