1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62480022
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平野 哲也 東京大学, 海洋研究所, 教授 (70013571)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩田 宗彦 東京大学, 海洋研究所・大槌臨海研究センター, 助手 (20090475)
川内 浩司 北里大学, 水産学部, 教授 (70050523)
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Keywords | サケ / 甲状腺 / 甲状腺ホルモン / チロキシン / トリヨ-ドチロニン / ビワマス / ヒラメ / コルチソル |
Research Abstract |
甲状腺ホルモンは、魚類の回遊、特にサケ科魚類の稚魚の銀化と降海回遊に深く関与していると考えられているが、その作用機序は明かではない。本研究の目的は、下垂体からの甲状腺刺激ホルモンの分泌機構および甲状腺ホルモンの作用機序を、サケの回遊との関連において明らかにすることにある。本年度においては,以下の成果が得られた。 1.ニジマスの未受精卵には、シロサケと異なり、トリヨ-ドチロニンの方がチロキシンより多く含まれている。これらの含量は、発生の初期にはあまり変化せず、ふ化後の卵黄吸収期に急速に減少する。シロサケにおいては、卵黄吸収後の降海期に合わせてチロキシンの上昇がみられたが、非降海型のニジマスでは、顕著な変化は認められなかった。 2.種々の魚類の未受精卵中の甲状腺ホルモン濃度を測定したところ、淡水魚ではチロキシンがより多く、海産魚にはトリヨ-ドチロニンが多く含まれていた。サケ科魚類の卵は、両者をほぼ均等に含んでいた。 3.シロサケをふ化場から放流すると、降河途中の稚魚の血中チロキシン濃度が上昇し、河口から海に入るにつれて減少する。海ではなく、淡水の琵琶湖に降るビワマスにおいても、降河中にチロキシン濃度の上昇が見られる。シロサケ稚魚を未経験の水質にさらすと、やはり血中チロキシン濃度が上昇するので、甲状腺ホルモンはサケの母川の記憶に関与している可能性が考えられる。 4.ヒラメの変態期には、体組織中のチロキシン濃度の上昇とともに、副腎皮質ホルモンのコルチソル濃度が増大する。コルチソルは甲状腺ホルモンの作用を増強するものと思われる。 5.シロサケの未受精卵にはコルチソルも含まれており、発生初期に減少するが、浮上期に再び上昇する。サケの降海回遊には、甲状腺ホルモンとともに副腎皮質ホルモンの関与が考えられる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Tanangonan,J.B.et al.: "Changes in tissue thyroxine level of metamorphosing flounder paralichthys olivaceus reared at different temperature." Nippon Suisan Gakkaishi. 55. 485-490 (1989)
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[Publications] Ogasawara,T.et al.: "Changes in plasma prolactin and growth hormone concentration during freshwater adaptation of juvenile chum salmon(Oncorhynchus keta)reared in seawater for a prolonged period." Fish Physiology Biochemistry. 7. 309-313 (1989)
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[Publications] Inui,T.et al.: "Effects of bovine TSH injection in prometamorphic flounder larva on the tissue thyroxine level and metamorphosis." General and Comparative Endocrinology. 74. 406-410 (1989)
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[Publications] Tagawa,M.& T.Hirano: "Changes in tissue and blood concentrations of thyroid hormones in ceveloping chum salmon." General and Comparative Endocrinology. 76. 437-443 (1989)
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[Publications] Iwata,M.et al.: "Effects of thyroid hormones on phototaxis of chum and coho salmon juveniles." Aquaculture. 82. 329-338 (1989)
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[Publications] Fujioka,Y.et al.: "Seasonal changes in plasma thyroxine levels in biwa and amago salmon reared in the pond." Nippon Suisan Gakkaishi. 56. (1990)