1987 Fiscal Year Annual Research Report
塩類ストレス下の植物根膜ベシクルの傷害および水素イオンポンプ活性の変動解析
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62480052
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松本 英明 岡山大学, 農業生物研究所, 助教授 (80026418)
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Keywords | 高等植物 / 塩類ストレス / 生理障害 / 細胞膜 / イオン輸送 / プロトンポンプ / ATP分解酵素 |
Research Abstract |
Ca^<2+>欠乏に敏感なキウリを用いて. Ca^<2+>欠乏によるH^+ポンプの障害を中心に検討した. K^+の吸収にともなうH^+放出能を外液のpHの低下で測定すると5日間Ca^<2+>欠乏においた根で約50%低下していた. そこで根のミクロゾーム画分よりDextranT70を用いて膜ベシクルを調製して直接ベシクルのH^+ー輸送活性をキナクリンのクエンチング法で測定を試みた. 先ず調製したベシクルのH^+輸送の諸性質について調べた. 基質の利用性はATP》UTP>GTP=PPi>CTP=ADPの順であった. 阻害剤の影響はNaN_3,Na_2MoO_4で殆んど阻害されなかったが, 100μMNa_3VO_4で62%, 50mMKNO_3で42.8%の阻害が起こり, やや原形質膜を主体とするベシクルと考えられた. このベシクルのH^+ー輸送活性は根のH^+放出活性と同様, Ca_+欠乏で強く抑制されていた. 健全根, Ca^<2+>欠乏根のベシクルのATPに対するKm値はそれぞれ0.77mM, 1.43mMであった. 次にベシクルのH^+ーATPaseについて検討した. 活性は100μMNa_3VO_4で62.5%阻害されたが, KNO_3, DESによる阻害は小さく50μMDCCDによって32.7%阻害された. ベシクルのATPaseを比較するとCa^<2+>欠乏根ではbasal活性が増加したがH^+ーATPaseは逆に強くCa^<2+>欠乏で抑制されていた. またH^+ーATPaseのATPの対するKm値は, Ca^+欠乏根で約3倍高かった. これらの結果から, H^+ー輸送活性の低下の一因はH^+ーATPase活性の低下によると考えられた. ベシクルのH^+ーATPaseの活性低下は, 膜の脂質とタンバクの機能低下が考えられるので, 原形質膜よりnーOCtylーglucosideを用いH^+ーATPaseを可溶化し, リン脂質を加え膜再構成系でのH^+ーATPaseの活性を測定した. すると, 明らかにCa^<2+>欠乏根のリン脂質による活性化が低く, 既に報告したリン脂質の減少のみならず, H^+ーATPaseそのものの再構成系を含む機能低下が起っていると考えられた.
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 松本英明: Plant and Cell Physiology. 28. 643-652 (1987)
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[Publications] 松本英明: Plant and Cell Physiology. 28. 1153-1157 (1987)
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[Publications] 阿部俊之助: Agricultural and Biological Chemistry. 51. 1729-1731 (1987)
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[Publications] 松本英明: Plant and Cell Physiology. 29. 79-84 (1988)
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[Publications] 松本英明: Plant and Cell Physiology.
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[Publications] 松本英明: Soil Science and Plant Nutrition.
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[Publications] 松本英明: "植物生産システム実用事典" フジ・テクノシステム出版,
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[Publications] 松本英明: "農林技術大系 第1巻" 農村漁村文化協会, 18 (1987)