1988 Fiscal Year Annual Research Report
塩類ストレス下の植物根膜ベシクルの傷害および水素イオンポンプ活性の変動解析
Project/Area Number |
62480052
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松本 英明 岡山大学, 資源生物科学研究所, 助教授 (80026418)
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Keywords | 高等植物 / 塩類ストレス / 生理障害 / 細胞膜 / イオン輸送 / プロトンポンプ / ATR分解酵素 |
Research Abstract |
オオムギは200mMのNaCl存在下でも生育は著しく抑制されなかった。そこでコントロール根と200mM食塩で処理した根よりミクロソーム画分を得、さらにDextran T70を用いて膜ベシクルを調整し、そのH^+輸送活性をキナクリンのクエンチング法で測定した。NaCl処理根のベシクルのH^+ポンプ活性は、コントロール根の約2倍の値を示した。ベシクルのH^+ポンプ活性の増加に対する200mMNaClの処理期間を検討すると、3日で最高に達し以後変動しなかった。NaClによる活性増加はシクロヘキシイミド、アクチノマイシンDによって強く抑制された。次に、ポンプ活性が高まるベシクルの膜の性質を調ベた。ポンプ活性の至適pHは7.5に認められ、KNO_3で強く阻害されたがNa_3VO_4、NaN_3では殆んど阻害されなかった。さらにFCCP、DCCD、gramicidinDで強く阻害されることからトノプラスト由来と考えられた。基質はATPに対する特異性が高かった。H^+ポンプ活性に対する一価のイオンの影響をみると、KBr、RbCl、NaCl、CsCl、LiClで強く活性化を受け、有機の塩、Choline Clで最大の活性化を受けた。一方、K塩ではKCl、KBrのみで活性化が認められたが、他のK塩では活性化が起らなかった。このことはアニオンによって活性化を受けることを示している。これら一連の性質はH^+ポンプがトノプラストに由来していることを示した。一方、ATPに対するKm値はコントロール根、NaCl処理根のベシクルとも0.5mMの値を示し、VmaxのみがNaCl処理根で高まっていることを示した。さらにベシクルをDextran T70の密度勾配遠心を行うと、同じ密度の所にコントロール根、NaCl処理根のベシクルのH^+ポンプ活性のピークが認められた。以上のことからNaClによって性質を同じくすると考えられるトノプラストのH^+ポンプ活性が、誘導生成されていることが示唆された。
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[Publications] 松本英明: Plant and Cell Physiology. 29. 79-84 (1988)
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[Publications] 松本英明: Plant and Cell Physiology. 29. 281-287 (1988)
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[Publications] 松本英明: Plant and Cell Physiology. 29. 1133-1140 (1988)
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[Publications] 松本英明: Plant and Cell Physiology. 29. 1279-1287 (1988)
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[Publications] 松本英明: Soil Science and Plant Nutrition. 34. 499-506 (1988)
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[Publications] 松本英明: Ber.Ohars Inst.Iandw.Biol.Okayama Univ.19. (1988)
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[Publications] 松本英明: "植物生産システム実用事典" フジ・テクノシステム出版, 1989
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[Publications] 松本英明: "金属関連合物の栄養生理" 博友社, 1989