1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62480053
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河口 定生 九州大学, 農学部, 助教授 (20091366)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 信一郎 九州大学, 農学部, 助手 (60108678)
池田 元輝 九州大学, 農学部, 助教授 (00038283)
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Keywords | 拮抗微生物 / 溶菌作用 / トウガラシ疫病 / Phytophthora capsici / 土壌酵素 |
Research Abstract |
土壌伝染性病原菌であるPhytophthora capsiciにより発病するトウガラシ疫病菌は、トウガラシ生産に大きな制限因になっている。抑止土壌中にはトウガラシ疫病菌に対して多くの拮抗微生物が存在し、それらの疫病菌の生存及び発病に対する拮抗作用には疫病菌の菌糸の奇形化、菌糸への寄生、遊走子のうへの寄生、遊走子のう形成の抑制、溶菌作用などが観察された。本年度は、トウガラシ疫病の防除に対する拮抗微生物の発病抑止の機作解明と拮抗微生物の疫病防除への利用の可能性を検討した。 トウガラシ疫病の抑止土壌または抑止効果を示した有機物施用土壌から分離した拮抗微生物、Aspergillus sp.、Trichoderma sp.、Streptomyces sp.10B、Streptomyces sp.12A、Bacteria Bl、Pericillum sp.を用いた。これらの各菌株を稲わら堆肥に接種培養し、ポット土壌に施用した。拮抗微生物を処理した土壌にトウガラシを接種し、菌齢30日目にトウガラシ疫病菌を接種した。2ケ月のトウガラシ栽培期間中の疫病発生、土壌中の疫病菌数の変化、土壌の疫病菌に対する溶菌作用および土壌酵素活性を検討した。拮抗微生物処理区の疫病発生を調査した結果、Penicillium sp.処理区を除く他の全処理区について1%水準で拮抗微生物による発病抑止効果が認められ、土壌の疫病菌数が10/g乾土以下になると疫病の発生が激しく減少することが明らかになった。また、疫病菌に対する土壌の溶菌作用が強い処理区ではトウガラシ疫病の発生が減少した。なお、土壌の溶菌作用と関連して土壌の酵素活性を調べたところ、土壌の溶菌力は拮抗微生物およびその接種土壌のセルラーゼとβーグルカナーゼ活性に高い正の相関があることが明らかになった。 以上の結果から、トウガラシ疫病の発病抑止に土壌の溶菌作用が深く関与し、この溶菌力は拮抗微生物の産生する高い溶菌酵素活性に起因しており、また、トウガラシ疫病の防除に溶菌力の強い拮抗微生物の利用の可能性が明らかにされた。
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