1988 Fiscal Year Annual Research Report
メチル水銀による神経細胞毒性の発現機構に関する研究
Project/Area Number |
62480169
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤木 素士 筑波大学, 社会医学系, 教授 (10040164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 和子 筑波大学, 社会医学系, 講師 (60110508)
田島 静子 筑波大学, 社会医学系, 講師 (50040192)
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Keywords | メチル水銀 / 経口投与 / 非結合型メチル水銀 / ミトコンドリア / 電子伝達系 / 差スペクトル / チトロクロム / 水俣病 |
Research Abstract |
経口的に摂取されたメチル水銀が、神経細胞毒性を発現するに至る過程において、血中から臓器間を移行する際の形態について追求するとともに、細胞内に移行したメチル水銀が示すミトコンドリア(Mt)におけるエネルギー代謝系に対する阻害部位を究明した。 7週令雄性ラットに塩化メチル水銀(CH_3HgCl)を経口投与し実験的水俣病の発症モデルを作成した。この間、中毒の状態が発症前段階ならびに発症後の状態を示すメチル水銀中毒(MeHg中毒)の各段階において、大脳、小脳、肝臓、腎臓を摘出し、臓器ホモジネートを低分子画分、脂質画分、高分子画分に分画し、各画分のMeHgについて、その存在形態をloosely bound type MeHg(非結合型MeHg)およびbound type MeHgに分別して分析した。これらの推移から、肝臓や腎臓に比べて脳における非結合型MeHgの割合に特異な推移がみられる等、MeHgの臓器間移行と毒性発現に関して非結合型MeHgが重要な役割を担っていることが考えられた。 ラットを用い、ネンブタール麻酔下で心臓よりHanks PBS(-)液を注入して脱血した全脳を摘出し、Ficollを用いた密度勾配遠続法(99000g30min)により非シナプス性Mtを得た。従来のOZAWA法によるよりも、この方法でラット脳からMtを分離することによりMt呼吸鎖成分の分光学的測定が可能になった。非シナプス性Mtに、呼吸活性を完全に阻害する濃度のCH_3HgClを添加し、4℃で1時間酸素平衡下にインキュベートした。これにグルタミン酸Na・コハク酸Na混合-呼吸基質およびADPを添加し、2波長分光々度計(日立-557型)により還元一酸化差スペクトル測定を行なったところ、対照Mtの差スペクトルに存在した電子伝達複合体-Cyt、b、c_1、c、aa_3の吸収が消失した。このことから、MeHgにより胞Mtの電子伝達系のCyt bからCyt c_1の間が阻害されることが明らかとなった。
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