1989 Fiscal Year Annual Research Report
呼吸器系悪性腫瘍発現に及ぼす慢性吸入大気汚染物質の促進効果に関する研究
Project/Area Number |
62480181
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
ムラカミ マサタカ 国立公害研究所, 環境保健部, 部長
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 敬二 筑波大学, 基礎医学系・病理学教室, 助教授
佐野 友春 国立公害研究所, 環境生理部, 研究員
市瀬 孝道 国立公害研究所, 環境生理部, 主任研究員
嵯峨井 勝 国立公害研究所, 環境生理部, 室長 (80124345)
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Keywords | 二酸化窒素(NO_2) / 慢性吸入 / 腫瘍促進効果 / N-bis(2-hydroxypropyl)nitrosamine / 腺腫(Adenoma) / 腺癌(Adenocarcinoma) / 肺胞上皮細胞 / 過形成 |
Research Abstract |
前年度までは、NO_2の呼吸器系腫瘍促進効果を調べる為に、それだけでは肺に腫瘍を生じない最大無作用近似量(0.5g/Kg体重)の発癌物質(Nーbis(2ーhydroxypropyl)nitrosamine、DHPNと略す)をWistar系雄ラットに1回腹腔内投与し、その後3濃度(0.04ppm、0.4ppmおよび4ppm)のNO_2を連続17ヵ月間暴露した実験をした。その結果、DHPNを投与しただけでNO_2を暴露していない対照群とDHPN投与後0.04ppmNO_2を暴露した群で40匹中1匹にadenoma(良性腫瘍)が生じていたが、0.4ppm群には腫瘍は認められなかった。一方、DHPN投与後4ppmNO_2(労働環境規準)を暴露した群では40匹中4匹にadenomaが生じ、1匹にadenocarcinoma(悪性腫瘍)が生じていた。 今年度は肺と鼻腔以外の全臓器の腫瘍の検査と腫瘍マ-カ-として、NO_2暴露12ヵ月目と17ヵ月目の尿中ポリアミン量の測定を行った。DHPN投与により、肺以外にも低率ながら腫瘍の発生が認められた。主な腫瘍発生臓器は肝臓、すい臓、脳および脳下垂体であり、その発生率は3〜13%であった。また、NO_2暴露濃度に依存した腫瘍発生は認められなかった。しかし、全体的に見てDHPN+0.04ppmNO_2群の腫瘍発生率が最も高かった。この理由は不明である。また、DHPN投与によって認められた肺の腫瘍が他の臓器等で発生した腫瘍の転移によるものではなかった。腫瘍マ-カ-として測定した尿中ポリアミン量は、12ヵ月および17ヵ月目ともに、NO_2の暴露濃度に依存して増加していた。しかし、全体の腫瘍発生率は、上記のとおり、かならずしもNO_2濃度に依存していないことから、腫瘍のマ-カ-としての評価は下しがたい。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Hamapeter Witschi,嵯峨井勝: "オゾンおよび二酸化窒素と肺がんーー最近の知見と問題点ーー" 大気汚染学会誌. 24. 1-20 (1989)
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[Publications] 嵯峨井勝,市瀬孝道,佐野友春,村上正孝,藤井敬二: "二酸化窒素の発癌促進作用に関する実験的研究" 大気汚染学会誌. 26. (1990)