1987 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞がん発生過程における肝細胞表面抗原のモノクローナル抗体を用いた解析
Project/Area Number |
62480199
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
森實 敏夫 慶応義塾大学, 医学部・内科学, 専任講師 (20129703)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩渕 直人 慶応義塾大学, 医学部・内科学, 助手 (90168592)
|
Keywords | 肝細胞がん / モノクローナル抗体 / 細胞膜抗原 / 肝細胞 / 腫瘍特異抗原 / 肝特異抗原 |
Research Abstract |
本教室で作製に成功した二種類のマウスモノクローナル抗体H2およびB2は,各種正常臓器組織標本を用いた, 酵素抗体間接法による検討から,正常細胞では肝細胞とのみ反応性を有することが明らかにされた. またヒト以外の動物の肝細胞とは反応しなかった. さらにH2モノクローナル抗体は種々のがん組織との反応性の検討から, 肝細胞がんおよび胆管細胞がんとのみ反応し,胃がん,大腸がん,その他のがん細胞とは反応しないことが示された. 従って,H2モノクローナル抗体の認識している抗原は,種特異的肝特異抗原であることが明らかとなり,これをhuman liverーspecific pntigen1(HLSA1)と名付けた. また各種レクチンカラムを用いた検討から,HLSA1は,concanavalmAおよびpeanut lectinに親和性を有し,wheat germ lectinには親和性を有しない糖鎖を有する糖蛋白であることが示された. 免疫電顕による検討から,HLSA1は肝細胞内で核膜周囲,粗面小胞体,細胞膜に分布していることが示され,細胞膜蛋白の一種であると考えられた. 慢性肝炎,肝硬変の肝組織との反応性は正常肝と同様であり,肝細胞のみが染色され,その程度も正常肝と同じであった. 肝細胞がん組織を用いた検討では,症例の約20%においてHLSA1の減少が認められた. 一方やはり本教室で作製した1Hー9モノクローナル抗体は,正常肝細胞との反応性は低くおもに核周囲が軽度染色されるのみであったが,肝硬変の肝細胞および肝細胞がんとは強く反応した. 以上より,肝細胞,肝がん細胞には他の正常細胞および,胆管細胞がんを除く他の組織型のがん細胞には認められない特有の抗原が存在すること,さらに,肝細胞ががん化することによって,正常では少量しか存在しない抗原の量が増加すること,また,がん化によって正常では多量に存在する抗原の量が減少しうることが明らかとなった.
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] 斎藤英胤: 日本消火器病学会雑誌. 84. 675-683 (1987)
-
[Publications] 岩渕直人: 消火器と免疫. 19. 163-166 (1987)
-
[Publications] 森實敏夫: 医学のあゆみ. 143. 817-817 (1987)
-
[Publications] 森實敏夫: European Journal of Cancer and Clinical Oncology. 23. 163-169 (1987)