1987 Fiscal Year Annual Research Report
老年者呼吸器感染症の発症機序と至適治療に関する研究
Project/Area Number |
62480202
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福地 義之助 東京大学, 医学部(病), 助教授 (80010156)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長瀬 隆英 東京大学, 医学部(病), 医員
松瀬 健 東京大学, 医学部(病), 教務識員 (90199795)
山岡 実 東京大学, 医学部(病), 助手 (00191205)
石田 喜義 東京大学, 医学部(病), 助手
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Keywords | びまん性嚥下性細気管支炎(DAB) / 嚥下性肺疾患 / 気道の中間領域 / 12ーHETE / 喫煙ラット |
Research Abstract |
老年者の呼吸器感染症の中で頻度が高く生命予後を重篤なことが少くないのは誤嚥に続発する嚥下性肺疾患である. 62年度の研究により, 嚥下性肺疾患の中には,病理所見に特徴があり臨床像が未詳のびまん性嚥下性細気管支炎(DAB)が16%もみられることを剖検所見で確認した. 本症は発症,臨床症状,検査所見からみて通常の嚥下性肺炎(APN)びまん性汎細気管支炎(DPB)とは明らかに異なり, 高年発症の気管支喘息と誤られやすいことが判明した. 組織学的検討よりDABが中間領域を主に侵すことが確認されたが, 異物や異物反応が中間領域に多く認められる点でDPBとは異っていた. APNとも臨床像,異物の局在等の相違点が明らかであった. DABの動物モデルとしてラットの気管内への塩酸反復注入を試みた結果,気道・肺胞への化学的損傷の強さ,そのもののDAB成立への関与は観察されなかった. しかし塩酸注入後に生じる気道への細胞侵潤の進展性と気流閉塞の強さに相関がみられた. 以上より, DABは誤嚥による反復性の気道系損傷に, 二次的な感染症等が加わって,中間領域に慢性炎症を生じるものと考えられた. 今後は二次的感染のコントロール,少量の誤嚥の早期検出とその予防策が研究の課題として残されている. ウィスター系ラットに紙巻きタバコ30本を15分喫煙させた後に,気管支肺胞洗滌(BAL)を施行しBAL液の蛋白濃度,プロスタノイドの検索を試みた. ・・・喫煙群(n=10,SM)非喫煙群(n=10,NSM)には蛋白濃度の差は認めなかったが, HPLCにより12HETEと思われるピークがSM群でNSM群より多数例に認められた. その濃度はSM群でNSM群より高値の傾向がみられた(P=0.053). この実験結果より, 喫煙等による急性上皮障害のマーカーとして, BAL液中の12ーHETE濃度が重要な意義をもつ可能性が示唆された.
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[Publications] 福地義之助: 日本胸部疾患学会雑誌. 25. 10 (1987)
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[Publications] 松瀬健: 日本胸部疾患学会雑誌. 25. 242 (1987)
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[Publications] 松瀬健;福地義之助他3: 日本胸部疾患学会雑誌. 25. 244 (1987)
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[Publications] T.Matsuse;Y.Fukuchi;K.Kida;etal: Amer.Revi.Respir.Dis.(Suppl.)135. A266 (1987)