1988 Fiscal Year Annual Research Report
白血病性幹細胞の増殖・分化異常の分子機構と白血病性形質発現の分子レベルの解析
Project/Area Number |
62480263
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Research Institution | Jichi Medical School |
Principal Investigator |
斎藤 政樹 自治医科大学, 医学部, 教授 (60012762)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
元吉 和夫 自治医科大学, 医学部, 助教授 (80137702)
中村 充 自治医科大学, 医学部, 助手 (20198237)
古川 雄祐 自治医科大学, 医学部, 助手 (00199431)
太田 雅嗣 自治医科大学, 医学部, 講師 (90160514)
北川 誠一 自治医科大学, 医学部, 講師 (50133278)
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Keywords | 自律増殖機構 / エレクトロポレーション / インターロイキン3 / 増殖因子依存性増殖 / 分化異常 / 遺伝子導入 |
Research Abstract |
当初の研究計画のうち本年度は以下の諸点を明らかにした:1)マウス骨髄単球性白血病細胞株NFS-60細胞はレトロウイルスで誘導された白血病細胞から分離され、増殖因子のインターロイキン3(IL-3)に依存して増殖するが、同時に幾つかのポピュレーションは顆粒球やマクロファージに、またエリトロポイチン存在下で赤芽球に、分化することがメチルセルロースを使ったコロニー形成法で明らかになった。また腫瘍の自律増殖機構を明らかにする目的で、この細胞株にIL-3遺伝子をエレクトロポレーション法で導入した。このトランスフェクタントからIL-3非依存性となって自律増殖能を獲得した10株のクローンが分離できた。IL-3産生能は10単位以下から280単位/mlまで、クローンにより様々であるが、増殖カーブには殆ど差異がなかった。サザン・ブロット分析で各クローンにはIL-3遺伝子が1コピーのみ導入されていることが判明した。一方、ノザン・ブロット分析ではIL-3のmRNAの発現量に10倍以上の差異を認めた。これらの事実と細胞内のIL-3活性には分泌量程の差異が認められないことを考え合わせると、NFS-60細胞の自律増殖機構には極めて微量の細胞内IL-3が重要な役割を演じていることが示唆される。2)一方、正常骨髄細胞の長期培養によって樹立されたマウス骨髄芽球細胞株FDC-P2細胞もIL-3に依存して増殖するが、IL-3遺伝子を導入することによって、2株のIL-3非依存性のクローンを樹立することができた。サザン・ブロット分析によると1株には1コピー、他方には2-3コピーのIL-3遺伝子が導入されており、またIL-3のmRNAの発現、培養液中へのIL-3の分泌、ヌードマウスへの皮下接種による腫瘍造成が見出された。この事実は増殖因子を自己生産することが造腫瘍性発現(悪性転換)の重要な要因であることを示唆している。
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[Publications] H.Nojiri,;S.Kitagawa,;M.Nakamura,;K.Kirito,;Y.Enomoto,;M.Saito.: J.Biol.Chem.263(16). 7443-7446 (1988)
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[Publications] M.Akashi,;F.Takaku,;H.Nojiri,;V.Miura,;Y.Nagai,;M.Saito.: Bllod. 72(2). 469-479 (1988)
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[Publications] K.Hara,;T.Suda,;J.Suda,;M.Eguchi,;N.Ihle,;S.Nagata,;Y.Miura,;M.Saito.: Exp.Hematol.16. 256-261 (1988)
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[Publications] Y.Sato,;K.Kitano,;S.Tsunoda,;M.Yoshida,;E.Kaji,;T.Suda,;S.Sakamoto,;K.Motoyoshi,;M.Saito,;Y.Miura.: Blood. 71(6). 1561-1567 (1988)
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[Publications] A.Ohsaka,;M.Saito,;I.Suzuki,;Y.Miura,;F.Takaku,;S.Kitagawa.: Biochim.Biophys.Acta. 941. 19-30 (1988)
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[Publications] M.Ohta,;F.Takaku,;Y.Miura,;S.Kitagawa,;M.Saito.: Jpn.J.Cancer Res.79. 350-358 (1988)
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[Publications] 斎藤政樹: "Annual Review 血液 1988 高久史磨、青木延雄、仁保善之、長尾大 編" 中外医学社、東京, 18 (1988)
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[Publications] 斎藤政樹: "がん・バイオサイエンスニュース 渋谷正史、吉田光昭 編" 「バイオサイエンスの進展に基づくがんの重点研究」総括班, 8 (1988)