1987 Fiscal Year Annual Research Report
クモ膜下出血に続発する脳血管攣縮の発生機序および治療法に関する薬理学的検討
Project/Area Number |
62480304
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 富男 東京大学, 医学部(病), 講師 (10134561)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 美紀子 東京大学, 医学部(病), 助手 (90177527)
野口 信 東京大学, 医学部(病), 助手 (10189384)
|
Keywords | クモ膜下出血 / 脳血管攣縮 / 内皮依存性弛緩 / 内皮細胞 / 血管作動物質 |
Research Abstract |
血菅作動物質を血菅内及び血管外から投与した場合の, 収縮,弛緩の相違をしらべるため, 血管還流システムを作製した. 当初, 血管径を測定するために, Busse教授らの開発したphotoelectoric device を使用する予定であったが, 製造中止となったため, 血管内圧変化を圧トランスデューサで測ることとした. 現在, そのための機器を準備している. この間に従来の等尺性張力測定システムを用いて, クモ膜下出血が内皮依存性弛緩に及ぼす影響について検討した. すでに, ヘモグロビンやクモ膜下出血患者の髄液が, 内皮依存性弛緩を抑制することは報告されているが, ウサギやイヌの脳血管を用いた実験であった. 今回われわれは, サル及びヒトの脳血管を用いて実験を行った. 摘出血管をプロスタグランディンFD22α.ニD2で収縮させ, アセチルコリン,ATPなどで内皮依存性弛緩をしらべ, それに対するクモ膜下出血患者の髄液の影響をみた. サル及びヒトの脳血菅はアセチルコリンでは弛緩をおこさなかった. サル脳底動脈はATPにより容量依存性の弛緩をおこし, 10^<-4>Mにて最大収縮の80%の弛緩を呈した. クモ膜下出血患者の髄液を前処置すると, 10^<-4>Mでの弛緩は約60%に抑制され, 出血後早期の髄液ほど抑制効果が大きかった. ヒト中大脳動脈は10^<-4>M ATPにて約40%の弛緩がみられたが, 血性髄液により軽度の弛緩抑制が認められた. 血管撮影にて攣縮の認められた患者の髄液は, 一認められなかったものに比べ弛緩抑制がつよかった. また, クモ膜下出血発症後5日目に死亡した患者の中大脳動脈では, 充分な収縮がみられるにもかかわらず, 弛緩反応が抑制されていることが確かめられた. 以上より, クモ膜下出血により内皮依存性弛緩が障害されることが, 血管攣縮の原因の一つであると考えられた.
|