1988 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子操作により効果を増強したキラーT細胞による脳腫瘍に対する養子免疫療法の開発
Project/Area Number |
62480307
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山下 純宏 金沢大学, 医学部, 教授 (90026948)
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Keywords | 遺伝子操作 / IFN-γ遺伝子 / マウス神経系腫瘍 / 脳腫瘍 / 腫瘍免疫 / 養子免疫 |
Research Abstract |
IFN-γには直接的な抗腫瘍効果の他に、immunomodulatorとして主要組織適合抗原(MHC)や腫瘍関連抗原の発現を高める作用が知られている。しかし、IFN-γの全身投与では生体内での半減期が短く、腫瘍局所での有効濃度を維持することは困難である。われわれは前年度の研究により、IFN-γ遺伝子を導入されたマウス神経系腫瘍細胞は宿主の免疫に必要な表面抗原を発現しており、宿主の腫瘍免疫を惹起させる可能性があることを示した。 今回はマウス203gliomaに対するCTLクローン、Eー4、を作成しそのCTLにretrovirus vectorを用いて、マウスIFN-γ cDNAを導入し、その抗腫瘍活性を増強させることを試みた。遺伝子導入は、腫瘍細胞に導入したときと同様の方法により、遺伝子導入にはretrovirus vector PSVS(MuγΔA)を用いた。このベクターをtransfectさせたpackaging cell line、ψ2の上清を含む培地で腫瘍細胞を培養し、virus vector感染細胞をselection medium G412にて選択した。G418耐性のsubclone、Eーγー4、Eーγー5、Eーγー6、Eーγー7、Eーγー9を樹立した。southern blot法でこれらsubcloneにIFN-γ遺伝子が組み込まれていることが確認された。Cr(51)release assayでin vitroでの抗腫瘍活性を検討すると、CTL親株であるEー4に比較して、IFN-γ遺伝子を組み込んだsubline、特にEーγー9では、killing activityは約3倍上昇していた。in vivoのWinn assayにおいても、親株であるEー4に比較して、生着率の抑制に有意の効果が認められた。 以上より、マウス神経系腫瘍のシステムにおいて、腫瘍細胞および腫瘍特異的キラーT細胞にIFN-γ遺伝子を組み込むことが可能であり、そのことによって、抗腫瘍免疫反応をmodifyすることが可能であることが明らかとなった。このような手法が、将来的には、ヒト悪性脳腫瘍の治療にも応用できる可能性が示唆された。
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[Publications] Yamashita,J.;Handa,H.: Acta Neurochirur. 42. 137-141 (1988)
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[Publications] Yamasaki,T.;Kikuchi,H.;Yamashita,J.;Handa,H.;Kuwata,S.;Taguchi,M.;Namba,Y.;Hanaoka,M.: Cancer Res.48. 2981-2987 (1988)
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[Publications] Miyatake,S.;Kikuchi,H.;Iwasaki,K.;Yamashita,J.;ZuーYou Li;Namba,Y.;Hanaoka,M.: J Neurosurg. 69. 751-759 (1988)
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[Publications] Shibamoto,Y.;Abe,M.;Yamashita,J.;Takahashi,M.;Hiraoka,M.;Ono,K.;Tsuji,K.: Int.J.Radiation Oncology Biol.Phys.15. 285-290 (1988)
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[Publications] 宮武伸一,岩崎孝一,山下純宏,菊池晴彦,難波雄二郎,渡辺好彦,花岡正男: Biotheray. 2. 25-29 (1988)
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[Publications] 山下純宏: 月刊メディカルパソコン. 2. 137-148 (1987)
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[Publications] 山下純宏,石川正恒,菊池晴彦: "PET図説臨床癌シリーズNo.15脳腫瘍" メジカルビュー社, 1-176 (1987)
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[Publications] 石田陽一,景山直樹,高倉公明,吉田純,河本圭司,山下純宏 共編: "脳腫瘍病理カラーアトラス" 医学書院, 1-158 (1988)