Research Abstract |
歯科鋳造用ニッケルクロム系合金の最大の欠点は, 耐食性不良のために, 口腔内でニッケル,銅などが溶出すること, 鋳造性不良に基づく化学的,機械的性貭が劣ることである. 本系合金を価値ある実用合金にするためには化学的抵抗力の大きい合金を作成することが先決であり, 同時にその合金の鋳造体を如何にして欠陥のないものにするかにかかっている. 本年度はニッケルクロム二元系合金の試作と, 試作合金を用いた鋳造性, 耐食性の測定を行なった. 1.ニッケルクロム二元系合金の試作と鋳造 クロム量が, 5,10,15,20,25,30,35,40wt%のニッケルクロム二元合金を試作した. 合金組織はすべて均一固溶体組織で特徴ある金属組織は観測されなかった. 鋳込率の測定は, らせん状パターンにより行なったが, 部分的にクラックが生じたため鋳込寸法の測定は困難であった. また,脱酸剤成分を含有しておらず, 鋳造性が悪いため高周波吸引加圧鋳造機では棒状の引張り試験片の作製は困難であった. 2.耐食性の評価 直径8mm,厚さ1.5mmの鋳造体を作製し, エポキシ樹脂に包埋し, 片面研摩し, 試験試料とした. 測定液はリンゲル液を用い, ポテンショスタットによる自然電極電位, およびアノード分極曲線の測定を行なった. その結果, 自然電極電位では, クロム含有量が5,10〜20,25〜40wt%の3種類のグループに分類することができ, クロム量の増加に伴い自然電極電位は貴な側に移行した. 一方, アノード分極曲線では, クロム5〜10%,15〜40wt%の2つのグループに分類することができ, クロム量の増加に伴い, 孔食電位は貴な側に移行し, ヒステリシスループの面積も減少した. また, アノード域での電流が減少し, 耐食性の向上がみられた.
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