1988 Fiscal Year Annual Research Report
低アルブミン及び高脂血症における血栓形成機構の解析
Project/Area Number |
62480434
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
岡部 紘明 熊本大学, 医学部, 教授 (20185466)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡嶋 研二 熊本大学, 医学部, 助手 (60152295)
井上 正康 熊本大学, 医学部, 助教授 (80040278)
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Keywords | 低アルブミン血症 / 高脂血症 / ネフローゼ症候群 / 血栓症 / 無アルブミン血症ラット / 線容活性。 |
Research Abstract |
低アルブミン血症及び高脂血症を特徴とするネフローゼ症候群は血栓症を合併しやすいことが知られている。この易血栓形成性の原因として低アルブミン血症、高脂血症の存在、アンチトロンビンIII(ATIII)の尿中への喪失や血小板凝集能の亢進などが考えられているが未だ不明な点が多い。無アルブミン血症ラット(NAR)はネフローゼ症候群に類似した低アルブミン血症及び高脂血症を呈することが判明している。そこでネフローゼ症候群に認められる低アルブミン及び高脂血症がその易血栓性にどの程度関与しているかを検討するために、NARの血栓形成に対する感受性を解析した。NARの腸間膜の直径200μm程度の細動脈に直径10μmのmicroglass pipette(MGP)を挿入し、その表面での血栓形成速度および形成される血栓の大きさの変化を経時的にVideo recordingにより観察した。MGP挿入後、血栓形成が観察され始めるまでの時間をNARと正常のSprague-Dawley系ラット(SDR)で比較すると両者ともに有意な差異は認められなかった。形成される血栓の大きさ(最大径)で比較するとNARではSDRに比べて約4倍大きかった。またSDRでは形成された血栓は一定時間後、血管壁から遊離して消失してゆくが、この血栓形成から血栓消失までの時間はNARのほうがSDRに比べて約3倍長かった。これらの所見はNARは実験的血栓形成において血栓形成に対する感受性はSDRと差異は認められないが、血栓溶解能が低下していることを示唆する。NARとSDRでの凝血学的動態をいくつかのパラメーターで解析すると、α2-Plasmin inhibitor(α2PI)がNARにおいてSDRに比べて有意に高値であり、線容活性はNARのほうが低下している可能性が示された。この事は上述の実験血栓形成で得られた結果と矛盾しない。これらの結果は、低アルブミン血症及び高脂血症も血栓形成の素因になることを示唆する。α2-PIの増加と低アルブミンもしくは高脂血症との関わりについてを今後解析する必要がある。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Hiroaki Okabe.: Int.J.Peptide Protein Res.31. 435-442 (1988)
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[Publications] Hiroaki Okabe.: Experimental Cell Research. 178. 287-295 (1988)
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[Publications] 岡嶋研二: 血液と脈管. 19. 495 (1988)
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[Publications] Kenji Okajima: Acta Haematol.(1989)
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[Publications] Kenji Okajima: Thromb Haemostas.(1989)
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[Publications] Masayasu Inoue.: J.Biochem.100. 155-158 (1988)