Research Abstract |
味覚検査としては甘味(蔗糖), 塩味(食塩), 酸味(塩酸), 苦味(塩酸キニーネ)など4基本味を中心に用いたが, PTC(フェニールチオ尿素)も追加し, 実施した. 各味試薬は濃度順に薄い方より濃い方へI, II, III, IV, V, VIの6段階とし, 各段階の濃度の味試薬について味の判別の可能性を検索した. 対象検査として本学看護学科学生72名につき, 上記の味覚検査を実施したが, 学生の体調に従い, 良好, 普通, 不良の3群に分けたが, 例数はそれぞれ15, 53, 4名であった. さらにこれらを感冒罹患の有無, 生理や食欲などの関係についても検索したが, 感冒に罹患中のもの 7名生理中のもの9名が含まれた. PTC検査陽性例は68名であったが, 陰性例は4名存在した. 体調が良好な15名についての味覚検査結果は, 4基本味の中でも塩味の閾値が最も低く, ついで甘味となっていた. 酸味と苦味はほぼ同程度で甘味よりも高くなっていた. 体調が普通と答えた53名では, 塩味については同閾値は低かった. 体調不良の4名は塩味が前2群の閾値よりも高く, 甘味, 苦味と並んだ. 最も閾値が高かったのは酸味であった. 感冒罹患中の7名では塩味の閾値が高く, 甘味と同程度であった. 酸味と苦味は高く, とくに苦味に上昇が顕著であった. 生理中の9名では塩味は非生理例よりもやや高く, 酸味, 苦味と同程度であった. 最も閾値の高いのは甘味であった. 以上, 健康状態にある学生においても体調によっては味覚に著しい変化が生じていた. 10例の胃癌術後患者について味覚検査を実施したが, 全例胃切術後に食欲低下が出現した. とくにこの傾向は制癌剤使用例に強く, 制癌剤中止により改善された. 現在, 摂取食品について糖分析装置と食塩濃度計を用いて, 含有糖分と食塩濃度を測定し, 摂食量増大のための援助に役立てている.
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