Research Abstract |
トランスポゾン転移実験に関しては, 当初計画通り, コピアのORFと3'LTR間にP因子由来のイントロンを導入し, 得られたDNAを, P因子発現ベクターの熱ショック蛋白質遺伝子の下流につなぎ, 更に, rosy遺伝子をP因子ベクター内に導入した. コピアの5'LTR内のRNAスタートサイトと熱ショック蛋白のRNAスタートサイトをDNA欠質法でつなぎ, 得られたDNAをP因子注入法により, ショウジョウバエ個体に入れ, rosy遺伝子の発現をマーカーとして形質転換体をスクリーニングした. しかし, 注入実験を何回も繰り返しておこなったにもかかわらず, 現在までに安定した形質転換体は得られていない. コントロールDNAでは, 高頻度で形質転換体を得られるので, DNA注入技術に問題があるとは思っていない. 現在, 失敗の原因を検討している. 複眼形成遺伝子(0m)へのトランスポゾン(tom)の特異的挿入と発現調節に関する実験については, 次の諸点が明らかにされた. (a)tomは, 297, 17,6と非常に良く似た塩基配列を持ち, 同様に, 逆転写酵素, プロテアーゼ, DNA挿入酵素遺伝子を持っている. (b)tomの0m遺伝子及び, sn遺伝子への挿入サイトの解析の結果, tomは(T)ATATのみを標的として挿入する事, 0m変異は確かにtomの挿入に依っている. (c)更に, 0m遺伝子(1D)のtom挿入地点(複数)は, DNAヘリックスの片側だけが, ATAT又は, プリン・ピリミジンの繰り返し機構を持つクラスターを形成しており, この機構が, tomの遺伝子特異的挿入の原因ではないかと示唆された. (d)0m1Dのtom挿入地点の近傍には, Mリピートが存在しており, それはアミノ酸300残基以上に対応する翻訳可能領域の中にあった. この0m1D遺伝子候補の3側下流には, 3つの繰り返されたAATAAAがあり, tomの挿入のhot spotはその5'側の直前にあった. 現在cDNAをとっている.
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