1988 Fiscal Year Annual Research Report
虚血による中枢ニューロン死滅の初期過程に関する研究
Project/Area Number |
62480470
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
片岡 喜由 愛媛大学, 医学部, 教授 (20025589)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三谷 章 愛媛大学, 医学部, 助手 (50200043)
楠崎 幸作 愛媛大学, 医学部, 助手 (70093929)
|
Keywords | 砂ネズミ / 脳底動脈輪形成不全 / 脳虚血 / 遅発性ニューロン死 / 海馬CALニューロン / 単一ニューロン自発放電 / 高頻度発火 / グルタミン酸神経毒性 |
Research Abstract |
初年度は虚血脳ニューロン解析の基礎実験としてラットを用いた。大脳皮質及び海馬ニューロンの自発放電頻度が虚血負荷後では一定程度上昇することを認め報告したが、本年度はこれらの基礎データをもとに、砂ネズミの虚血脳で本格的なニューロン死の初期過程、特にニューロンの電気活動の解析を行った。砂ネズミはラットより小型であり、脳底動脈輪の形成不全もあって、実験操作途上で死亡しやすいという難点があり、遅発性ニューロン死という優れた研究手段を提供しながら、電気生理学的にも、まち生化学的にも詳細には調査されていない。そこで先ず、動物個々の脳底動脈輪の形成不全を半定量的に見積ることを試みた。右側総頸動脈よりトリチウム水を注入し、正確に5秒後、断頭した。反対側の前脳諸領域への放射活性の回収率を同様な操作でえたラットの結果と比較すると、砂ネズミの回収率は極端に低く、またその程度に大きな個体差が認められた。次に両側総頸動脈血流を短時間遮断することにより一過性前脳虚血をほどこした砂ネズミの海馬CAL領域ニューロン自発放電を記録した。遮断開始数秒以内に基礎放電(5ー10Hz)は完全に消失した。90秒虚血では血流再開1分後に自発放電が回復し、30〜100Hzの高頻度発火が10〜40分持続した。数日後に行った組織学的検索では、遅発性ニューロン死を呈した動物は一例も認めなかった。一方5分間虚血では血流再開15分後に自発放電が回復したが、放電頻度は低く、基礎放電頻度を越えるものは認めなかった。この実験群では約30%の動物で遅発性ニューロン死をきたしていることが証明された。別の実験で、マイクロダイアリシスプローブを海馬CAL領域に挿入し、組織間液のグルタミン酸濃度を分析したところ、虚血により直ちに反応する濃度上昇を認めた。これらの事実から、遅発性ニューロン死が必ずしも、高頻度発火やグルタミン酸毒性だけで誘発されるわけではないことが結論された。
|