Research Abstract |
NiTi合金の鋳造は難しいとされていたが, 新しい鋳造機の開発によりこの合金の鋳造に成功し, 実用化のために諸特性を測定した. 鋳造による性質の劣下はほとんどなく, 実用的に問題が無いことがわかった. また, ステンレスやコバルトクロム合金に比べて, ポテンショスタット測定, 浸漬試験の結果, 腐食電流やNiイオン溶出量が少ないなど, 優れた耐食性が得られた. 組織学的には, 鋳造組織の写真撮影などによりその組織が均一で, しかも酸化された組織が少ないなど合金の優れた性質, 鋳造機の精密さなどを証明できた. NiTi合金の精密鋳造ができることにより応用の範囲が広がったといえる. さらに我々は, 合金側からのアプローチとしてCr,Mp,Pd,Au,Cuの添加について検討し, 合金の諸性質改良を行った. 合金添加と性質の変化は, 合金の変態点に関係が深く, 熱分析による正確な変態点測定が必要となる. Cr,Mo,Pdの添加は, 主に耐食性の向上に効果があり腐食電流, Niイオンの溶出量ともにさらに減少させることができた. また, Au,Cuの添加は, 機械的性質の向上に効果があり, 形状記憶効果しか得られなかった組成で超弾性が得られるようになり, 超弾性の範囲が広がった. これらの性質の変化は変態点, 特に二次的な変態点の影響が大きく, 熱分析においてもごく小さな変化が重要になってくる. 示差走査熱量計の導入により正確に小さな変化を捕えることができるようになり, 機械的性質の変化について的確な考察が下せるようになった. NiTi合金には, 以上のような性質の他に, 耐振合金としての振動減衰性, 衝撃吸収性がありこれらの測定も行った. これらの特性も機械的性質と変態点の影響が大きく, 機械的性質の測定, 組織学的な考察, 熱分析による変態点の正確な測定により実現された研究である. 今後は, 熱処理の影響などについても研究を進めて行くつもりである.
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