Research Abstract |
ビトロネクチンは, 1983年にRuoslahtiにより発見・命名された動物血奨中の細胞接着性糖タンパク質である. ヒト血奨中に, 約0.2mg/mlの濃度で存在し, 肝臓で合成・分泌される. 分子量75,000(以下75kDと略)の単量体であるが, 生体内で既に一部は65kDに分断されている. 私たちは, この糖タンパク質ビトロネクチンの生化学的な性状をより深く解明することを目的にビトロネクチンの分子量75kDと65kDの測定とビトロネクチン精製法の研究を行なった. ビトロネクチンは, 新鮮な血奨中で既に, 分子量75kDのポリペプチドと, それが一部断片化した65kDのものの混合物として存在する. しかし, 75kDと65kDの機能の差や, 75kDから65kDへの断片化の過程, 断片化の生理的意味などは全く不明である. 一方, たまたま入手したヒト血奨中の75kDと65kDの存在比が血奨によって異なることから, 75kDと65kDの存在量を決定している因子を探索する計画を立てた. 75kDと65kDの比を, 200余名のヒト血奨・血清について測定した. まず, 一検体0.1μlの血奨・血清で測定可能な方法を開発した. 驚くべきことに, 75kDと65kDの存在比は, 65kDの多い人, 中程度の人, 少ない人の3つのグループに, はっきりわかれる. この3つのグループが, ヒトのどのような因子と対応しているのか, 今のところ, 全くわからない. しかし, 同時に測定したビトロネクチンの血奨中濃度は, 肝疾患患者では有意に低い値を示し, 大変興味深い. また, ビトロネクチンの新しい精製法の開発を試み, ヘパリン固定化カラムを使用する画期的な精製法を確立することができた. この方法により従来法の450倍の効率を達成できた. 通常, 100mlのヒト血清より, 15〜30%の回収率で, 3〜6mgのビトロネクチンが2〜3日で精製できる.
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