Research Abstract |
わが国の牛・馬の系統や渡来の時期などを明らかにするために, まず, 本年度は, 全国の遺跡から牛・馬に関する遺物の出土状況を調査すると共に, 出土骨を比較同定する基礎資料を得るために, 在来種や現代種の骨を肉眼的, 計測学的に検索し, 以下の結果を得た. 1.牛・馬の出土状況については, 全国37都道府県から報告が寄せられ, 東京, 奈良, 千葉, 愛知, 兵庫などで, 多数の出土のあったことがわかった. また, 青森, 岩手, 九州各県などを現地調査したが, 弥生以前のものは, 伊皿貝塚出土の牛のみで, 他の遺跡のものは, 古墳から中世のものであり, 先人の報告と異なっていた. このことについては, 次年度に詳細にしたい. 2.在来牛・現代牛の骨について, 黒毛和牛雄9, 雌21例の全身骨格227部位を計測し, わが国の和牛の元祖である見島牛雄2(名大), 雌2(山口大)および鹿児島県口之島に野生状態で生息している口之島牛雄3, 雌5例のものと比較した. その実測値, 主成分分析の結果から, 口之島牛は, 最も小型の牛であることがわかった. また, 骨長より体高の推定式も求めた. 3.在来馬, 現代馬については, 木曽馬雄1, 雌8例(名大), トカラ馬雄3, 雌7例およびサラブレッド種雄5, 雌4例の計測を行い, その実測値, 主成分分析から, トカラ馬が最も小型の馬であることが示唆された. なお, 御崎馬雄9, 雌13例の遺体を発掘したが, 現在, 計測集計中である. 4.以上の観察を基に, 原ノ辻, 土井が浜, カキワラ貝塚などの出土牛骨を調査したが, いずれも小型で, 現生の口之島牛と似た型であることがわかった. また, 宇土城三ノ丸跡, 上の原遺跡II, 博多33次遺跡などの出土馬骨を調査したが, 小型から中型馬の体形で, 中世の遺跡では中型馬が多いことが判明した. 次年度は, 藤原京, 印南台, 須和田など全国各地の出土骨を中心に調査する予定である.
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