1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62510005
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
隈元 忠敬 広島大学, 文学部, 教授 (80033471)
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Keywords | 自我 / 存在 / 現象 / 現象論 / 自覚 / 明 |
Research Abstract |
本研究はフィヒテ晩年における「存在」と「自覚」との連関を両者の表裏構造において明らかにしようとするものである。昭和62年度には主としてフィヒテ晩年の知識学の探究を通じてこの点を追究したが、本年度は知識学への導入としての『意識の事実』『知識学入門講義』その他と、知識学の応用としての『学者の使命』『道徳論の体系』を取り上げて、この中に上記の観点を確証しようとした。 もともとフィヒテの哲学は、その前期においては自我から存在へ上りゆき(自我論)、後期においてはまず「存在」を確立し(存在論)、これから「自我」と「世界」へ下る(現象論)という経過をたどる。ここから、晩年の哲学は現象論であって、「存在-自我-世界」という三重構造の体系をなす。知識学においては主として「存在」と「自我」との連関が追究され、応用哲学においては「自我」と「世界」との連関が明らかにされる。かつこの体系が「明」の観点をもって貫かれているということを、この度の研究で捉えることができた。すなわち、第一に「存在」が自我として現象するということは、存在の本質たる「明」が「自我」の本質を構成するとともに、「自我」はこのことを自知するということであり、ここに存在の「明」と自我の「明」とが相表裏する。第二に「自我」が「世界」において自己を実現するということは、一面「自我」の理想を世界に具現することであるとともに、他面世界を自我の明の中に摂取するということを意味する。こうして結局は存在の明が自我を通じて世界に光被するのである。この観点は『学者の使命』においては、存在の映像を世界に実現するところに学者の使命があるとされ、『道徳論』の体系においては、存在の映像を概念と言いかえて、概念はこの点を自知して世界を形成するところに道徳の本質があるとする。晩年にはこのような形で「存在」と「自覚」とが表裏的に連関する。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 隈元忠敬: 広島大学文学部紀要. 48. 1-20 (1989)
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[Publications] 隈元忠敬: 日本哲学会『哲学』. 39. 31-45 (1989)
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[Publications] 隈元忠敬: 広島大学シンポジオン. 34-I. 1-8 (1989)
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[Publications] 隈元忠敬: 広島大学シンポジオン. 34-II. 1-12 (1989)
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[Publications] 隈元忠敬: 哲学訳〓(中国). 1. 65-75 (1988)
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[Publications] 隈元忠敬: La philosphie contemporaine(フランス). 4. (1989)