1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62510019
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Research Institution | RISSHOU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
庵谷 行亨 立正大学, 仏教学部, 教授 (90103168)
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Keywords | 日蓮 / 一念三千 / 法華経 / 唱題 / 立正安国 / 南無妙法蓮華経 / 題目受持 / 観心 |
Research Abstract |
日蓮の観心思想は、現実的・具体的であることにその特色がある。その要点をあげれば次の通りである。 1.時の認識。日蓮は法華経の弘まるべき正しい時を仏滅後末法と受けとめた。それは末法悪世の劣機こそ、釈尊の深い慈悲が寄せられるという法華経が有する歴史的必然であった。2.末法救済の教法。日蓮は、末法の時代を救済しうる教えは法華経の肝心南無妙法蓮華経の五字七字であるとし、これを仏種・大良薬とみなした。末法の人々は仏の教えに違背した謗法の重病者であるため、仏種である妙法五字の大良薬を服し病を治癒するのである。3.一念三千の受容。日蓮は、釈尊の教えの中心は法華経にあり、法華経の肝要は本門寿量品にあり、本門寿量品の真髄は一念三千であるとし、釈尊の極理を一念三千と受けとめた。一念三千は釈尊の真実を証得する行法であると同時に妙法五字の教法、釈尊の久遠因果を結集した仏種でもある。4.三業円満の唱題。個人的な観念観法ではなく、日蓮は身・口・意の三業にわたる題目受持(唱題)に末法の観心をみた。したがって信心に立脚した具体的な法華経の実践を重視したのである。5.立正安国運動。日蓮は現実社会にそくして仏法の真実を見た。したがって現実の社会を仏国土とすることこそ、釈尊の本意であるとして、立正安国の実現を生涯の課題とした。6.法華経の実践。日蓮は釈尊の教えに信順し、経文通りに法華経を実践していった。そのため数々の法難を被ったが、そのことによってよりいっそう日蓮は自覚と使命感を深めた。7.地涌の自覚。法華経に説く仏滅後の弘経者地涌の菩薩を自己の身に主体化することによって、日蓮は法華経を末法の世に弘める師としての自覚を持つにいたった。8.本時の娑婆世界。仏と信仰者が一体となった永遠不滅の浄土を日蓮はこの現実社会(娑婆世界)にみた。 以上の通り、本年度は日蓮の観心思想の特色について研究を進めた。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 浅井圓道: 大崎学報. 142. 55-69 (1986)
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[Publications] 早島鏡正: 日本仏教学会年報. 53. 375-391 (1988)
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[Publications] 村上嘉実: "仏教史仏教学論集" 野村耀昌博士古稀記念論集刊行委員会, 604 (1987)