1988 Fiscal Year Annual Research Report
大乗仏教と仏伝文学(特に大乗仏伝経典ラリタヴィスタラの和訳研究)
Project/Area Number |
62510020
|
Research Institution | KAGOSHIMA KEIZAI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
外薗 幸一 鹿児島経済大学, 経済学部, 助教授 (30099098)
|
Keywords | クマーラサンバヴァ / 廻施 / 呪願 |
Research Abstract |
大乗仏教は世俗的大衆的性格を色濃く帯びた仏教として展開してきたが、その根本的思想の醸成は、仏陀釈尊の神格化と、彼の神聖性に対する浄信の深化に俟つところが大であった。そして、釈尊の神格化と信心の深化という宗教性の高揚をもたらしたものは、釈尊の前世の行為を賞揚する本生文学と現世の業績を讃歎する仏伝文学とであったと言える。筆者は、この観点から大乗仏伝経典たるラリタヴィスタラに注目し、それを言語学的と思想史的との両面から解明していく作業に着手した。この作業の一階梯として、ラリタヴィスタラと深い関係にある仏伝経典シャーキヤシンハジャータカを和訳研究した(62年度)が、これに続く予備的研究として、今年度は、古典サンスクリット文学の最高傑作であるカーリダーサの「クマーラサンバヴァ」を訳出発表した。ラリタヴィスタラは仏教梵語で書かれているが、その言語学的特徴を知るためには、文法的に洗練された古典梵語の知識が欠かせないからである。この拙訳は未だ充分なものではないが、和訳として初めての全8章の完訳としての意義を有する。 思想史的に、本生文学・仏伝文学から大乗仏教へと展開する、一つの重要なテーマとして、「廻施」と「廻向」の問題がある。筆者は、この問題を原始仏教の文献に遡り、また、本生文学の中に描かれている「施餓鬼」の思想に着目し、それを解明することによって、従来知られていなかった「廻施」と「呪願」の関係を明らかにすることができた。これについては、63年度「西日本宗教学会」(於、九州大学)で発表した。
|
Research Products
(2 results)