1987 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62510026
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
弘 睦夫 広島大学, 文学部, 助教授 (80033504)
|
Keywords | 現代科学技術 / 情報科学 / 倫理 / 超越批判 |
Research Abstract |
今年度の中心的な目標は, 現代技術の全体的状況を把握することと, 先端的な個別技術特にコンピュータの発展に集約される情報科学技術の具体的な内容にある程度まで通暁することであった. そのための具体的な目標は, 最近公刊されたその種の文献に目的意識的に当たることと, 可能な限り広範な現場の研究者と交流することによって, 問題意識を鮮明にすることであった. 本年度は, 諸大学・研究所・会社の文献を利用し, 研究者・技術者との情報交換によって所期の目的はある程度まで実現できたと思われる. 訪問した各種研究機関としては, 東京大学(特に大型計算機センター)・千葉大学・日本IBM・鈴木教育ソフトなどがある. その他に, オーストリア哲学のデータ・バンク化の中心であるグラーツ市の哲学研究資料センター, オクスフォード大学の計算センターを訪問し, 計算機利用の現象とさまざまな問題点を見学・討議する機会を持つことが出来た. 現場を実際に体験することによって, 今後の研究方針として重要だと思われるのは, 技術開発に伴うマイナス面の具体的・実質的な解明と解決方針の提示である. 従来も, この点に関してはある種の文明批評として, 直観的・情緒的な批判の論調があったが, それば現実的に説得力のある建設的なものではなかった. もしも倫理学が現実に有効な, 社会的に責任を自覚した学問を志すのであれば, この点は緊急に対処すべき重要な問題点である. 情報科学技術の展開に対して, 基本的に賛同する立場からのいわゆる内在批判的な論評は数多く見られるが, 技術の場面に超越的な立場からの批判は倫理学の研究者に最も要求されている研究領域であるように思われる. 研究成果の公表は, 今年度は従来の継続的研究によるものに限られているが, 論文化され次第順次公刊を予定している.
|