Research Abstract |
本年度は, 1中国・日本の古代甲冑に関する資料収集, 2奈良・平安時代の武装形像の作品調査・写真撮影および既撮影写真の購入の, 以上2点を中心に行い, 一部について現段階での考察を加えた. 次にその概要を記す. 1 古代中国の武具・甲冑に関する諸文献にもとづき, 出土した実作品, および絵画・彫刻にあらわされた武装形像の資料を収集した. また日本の武具・甲冑に関しては, 昭和62年10月26日から11月8日まで京都国立博物館において開催された特別展覧会「日本の甲冑」により, 朝鮮半島と日本の諸作品を調査した. これにより, 中国の戦国時代-唐時代, 朝鮮半島-統一新羅時代, 日本の古墳時代-平安時代という, 東アジアにおける甲冑の変遷の大略をたどれたかに思われる. 2 調査した武装形像は, 岩手・黒石寺, 同・成島毘沙門堂, 同・中尊寺, 大分・真木大堂, 同・臼杵石仏, 滋賀・石山寺, 京都・仁和寺などの四天王像, 十二神将像である. なかでも, 仁和寺で新たに発見された, 同寺旧北院本尊薬師如来像の台座四面に浮彫された十二神将像は, 年紀・作者・由来のはっきりしたもので, 貴重な新資料である. 以上の資料をもとに, 武装という服制上の問題と, 四天王・十二神将の図像上の問題の2点につき, 考察を行った. 前者については, 中国の考古学上の遺品と武装形像の作品との比較をし, その相違を窺った. 後者については, 仁和寺の新資料をもとに検討し, 奈良時代以来の古様な図像と, 11・12世紀に新たに流布した図像の違いを踏まえた上で, 当該像の問題点につき一部成果を発表した.
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