Research Abstract |
連続して提示されている刺激音の周波数のみを急激に変化させて得られる聴性誘発反応を, 次の4つの条件下で測定し, 条件と誘発反応との対応を調べた. (A)被験者は刺激音を聞くだけで, 特別に課題は与えられていない-無課題条件, (B)周波数が基準周波数より高い方に変化した回数を数える-カウント条件, (C)周波数変化を検知したら, 直ちにボタン押し反応により変化の方向を応答する-ボタン押し条件, (D)周波数変化を検知し, その変化の方向を判断したあと, その判断結果を刺激音の周波数変化終了後500msecで点じられるLEDの光信号の合図まで保持し, その時点でボタン押し反応を行う-遅延条件, のそれぞれで実験が行われた. 基準周波数は1000Hzで, 100msecの変化時間のうちに, 5, 10, 50, 250Hz変化する条件, すなわち, 50, 100, 500, 2500Hz/secの周波数変化勾配の刺激音が用いられた. 脳波は頭頂部(Cz)から単極誘導された. 被験者は20才台の男子5名で, いずれも聴覚に障害はない. 実験の結果, N, 潜時およびP_2潜時は, 4つの条件間で殆ど差異がなく, いずれの条件でも周波数変化の勾配が急になるにつれて潜時は短くなった. これに対し, N_2および300の場合は, 潜時と周波数変化の勾配との関係はN_1やP_2と同じであるが, 潜時の値が実験条件で異なる. すなわち, N_2では無課題条件で潜時が最も短く, ついでカウント条件とボタン押し条件が同じ程度で, 遅延条件では最も長い潜時を示している. P300の場合も無課題で最も短く, カウント条件が同じく中間の値を示すが, ボタン押し条件での潜時が最も長く, 遅延条件ではむしろ潜時が短くなった. この結果にもとづいて, P300が運動と直接関連する電位であり, N_2は光信号の合図によって行うボタン押し反応の準備と関連する電位ではないかと想定される.
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