Research Abstract |
本研究では, 認知対象と認知者自身の相互交渉性の問題を, 対人情報処理過程におけるスキーマの機能との関係から検討を行なった. 先行研究の山本(1984)では, 相互交渉事態と印象事態など, 認知対象と認知者自身との関係が異なると, 対人情報処理に用いられるスキーマが異ることが示されていたが, そこでスキーマ項目として用いられていたものは, 相互交渉性の側面に関する項目がその中に含まれておらず, 必ずしも充分なものではなかった. そこで, 本研究では, 対人スキーマ構造の中に相互交渉性の側面が含まれうるのかその可能性を探り, さらに, 対人情報処理過程における, 相互交渉性を含んだスキーマの機能の検討をその目的とした. そのために, まず, 第1段階として, 対人情報処理過程において活性化されうるスキーマ項目の収集と検討を行なった. 刺激人物の様子をVTRに収め, 被験者に呈示し, 刺激人物について感じたことなどを自由再生法により回答してもらった. その結果, 多くの相互交渉性の項目が収集された. そこで, それらを整理し, 第2実験の為のスキーマ項目の中に含めた. 研究の第2段階では, 相手と直接関わりを持つ事態とそうでない事態とで, どのような対人スキーマが活性化されやすいかを検討した. その為, 実験条件として, 相互交渉性のある事態とない事態(2条件)×相手が示す好意的反応の種類(好意的/非好意的の2条件)の4つの実験条件を設定し, どのような対人情報が処理されやすいかを, 反応時間, 印象及び好意度を測定して検討した. その結果, 相手と直接的な関わりを持たない事態では, 相手が示す好意的な反応による違いがそう大きくなく, 共通した印象が持たれやすかったのに対して, 相互交渉性の事態では, 相手の反応により, 情報処理の仕方や形成される印象が大きく異なり, 非好意的な反応を示された者は, 相互交渉性の側面のみに注意を払い情報処理をしていた傾向が認められた.
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