Research Abstract |
本研究は「無意識的な」記憶が後の行動に影響を及ぼす事態において, 脳波, 脳直流電位, GSR, 心電図, 筋電図, 呼吸, 脈波などのポリグラフを記録し, 無意識的な記憶の再認に伴って生理的変化が見られるかどうかを調べ, さらに記憶すべき刺激のモダリティーや内容の違いによりポリグラフ反応に違いが見られるかどうかを調べようとするものである. 本年度はそのためにまず, この分野に関係する研究の文献を集中的に調べる作業を行った. その中には健忘症患者の示す, 意識を伴わない記憶の例や, 家族の顔を見てもそれがだれであるのか思い出せないものの, GSRは示す相貌失認の患者の例, あるいは閥下で提示された刺激が, 後の行動に影響を及ぼす実験の事例などについて詳しく調べた. 一方実験としては, まず第一段階として, 意識されない刺激を条件刺激(CS)として用い, それを不快音や不快な電気ショックのような無条件刺激(UCS)と連合する試み(古典的条件づけ)を行なった. 意識されないCSの提示は, 左右の耳に別々の情報を入れ, 被験者には片方の耳に入いる情報にのみ注意を向けるようにしておいて, 注意を向けない側の耳にそれを入れるという方法を用いた. その結果, 被験者の意識にはのぼoないものの, そのCSが提示されるとGSRや心拍の変化が生じ, 意識されないCSに対しても古典的条件づけが成立する事が示された. 現在進行中の実験は, CSとして人の可聴範囲を超える超音波や, 低周波数の音を用い, それをUCSと連合する事により, 古典的条件づけが成立するかどうかを調べるものである. これまでのところ, 生理的指標としてはGSRと心拍にとどまっているが, 研究が進めば他の種々の指標も同時に記録し, 最終目標としての「無意識的な記憶」の再認に伴う種々の生理的指標の研究へと発展させたい.
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