Research Abstract |
ブラウン管上に縞パタンを提示し, 縞パタン同士のCrawford effectに関する実験を行った, Crawford effectというのは, マスク刺激(MS)と検査刺激(TS)とを同じ位置に, 様々な時間間編で提示した時に生ずる特有のマスク効果をいう. この場合, MSのonset時とoffset時に提示されるTSの見えが特に強く妨害されることが知られている. 今回は, MSとTSに正弦波パタンを用いたところ(第一実験), MSの空間周波数が低い場合には, MSのonset時とoffset時に, TSの急激な閾値の上昇が認められ, いわゆるtransient maskingが生じたが, MSの周波数が高い場合には, そのような急激な閾値の上昇は認められなかった(sustained maskingが生じた). transient maskingが生じるのは, MSのonsetやoffsetに対して視覚系が敏速に応答する性質があるためだといわれている. この考えに従えば, 低空間周波数に選択的に応答するチャンネルは, いわあるtransient channelで, 刺激のオン, オフに敏感であり, 一方, 高空間周波数チャンネルは, それらにあまり敏感ではないということが考えられる. 次に, MSに振幅変調波パタン(搬送波の周波数は, 12c/deg, 信号波のそれは, 2c/deg)を用いて, 同様の実験を行った(第二実験)ところ, transient maskingが生じた. 今回用いた振幅変調波パタンに含まれる正弦波成分は, 10, 12, 14c/degの三種類で, いずれも高空間周波数である. いわゆる多重チャンネルモデルに従えば, MSの成分は, いずれも高空間周波数であり, それに関与するのは, 高空間周波数チャンネルということになり, 実験1から予想されるようにsustained maskingが生じてよいはずであるのに, 反対の結果になってしまった. そこで, 視覚系には, 振幅変調波パタンが提示された時には, 高空間周波数チャンネルと低空間周波数チャンネルが, 同時に応答するような性質があるのではないかと考えた.
|