Research Abstract |
調査対象地として, 福井県坂井郡坂井町高柳と宮城県伊具郡田林の2村落を選定し, 実証研究を行った. 福井県坂井郡坂井町高柳の村落としての基本的性格は, 輪中のむらであること, 米単作農村であること, 同族団・親族的家連合の機能が一般には弱いことなどをあげることができる. 農業生産構造からいうならば, 高柳の場合, 農業の発展的上向展開はほとんどなく, 土地移動, 農作業の受委託, 土地の貸借も農業の経営上昇にむすびつく動きではなく, 農作業の協業を「仲間」関係として結び, 労働力を補完しあっている. そして村落の運営は近隣組としての班の比重をますます大きくさせながら, 全体としてのまとまりを維持している. さらに, 村落内集団構成にもこの班のかかわりが大きく, 日常的な近隣交渉と相互に補完しあいながら, 自治的な村落生活が組み立てられている. 宮城県伊具郡丸森町田林は, 行政地区が分断されながらも, むらのまとまりを保持しつつ, 機能的に地域的範域を編成しながら, 生活協同を行っている村落である. 生業は, 耕作面積が小さいことから, 水稲のほかにさまざまな組み合わせをつくっており, 非農業へ傾斜しながら, 家族の成員構成にあわせて労働力の燃焼をはかっている. したがって, 日常の交際は家族協業のあり方に応じて異った姿をとる. しかし, 住民の全体の生活にかかわる部分では, 日常近接の関係においてそれぞれの範域を決めるという, 小地域の重層性がみられる. したがって住民生活は, 自治的な生活の側面と行政にむすびつく生活場面とをはっきりと区別し, 村落の統合が維持されている. このように, 二つの村落は, 生活の必要に応じて結ぶ家々の関係が, 行政とは区別された部分で, 村落住民相互に濃密にとり結ばれており, 現代村落の維持・再生産が支配の末端や媒体として以上に, 日常生活のなかで行われていることをみることができる.
|