Research Abstract |
鹿児島県・鹿児島市における自然災害のうち, 特に人間生活に顕著な影響を与えている「桜島の火山活動による降灰及び噴石による被害」「台風による被害」「集中豪雨による被害」に分け, 家族生活がこれら自然災害によりどのように変容したか, また, しつつあるかを調査研究している. 「桜島の火山活動による被害」は, 日常的な降灰による生活への影響と健康に対する意識及び実態調査を鹿児島市内6地点において実施した. 調査地点は, 年間を通して降灰量の多い所と少ない所及びその中間に位置する所であり, 社会的には地元の人の多い所と他地域からの来住者の多い所, 更に, 社会的移動の少ない所と多い新興の団地を選定した. この調査には, 台風・集中豪雨などの自然環境, 社会環境についての意識および実態調査を加えた. 調査実施時点の11月が例年では, 降灰の少ない時期であるのに, 本年はかなりの降灰がみられた為, 若干の有意差が考えられる. 地域差もみられるが, 地元の人より来住者の方が, 降灰に対し鋭い反応を示した. 集中豪雨に対しては, 昭和60年に死者を出した地域では, 鋭い反応がみられた. 「台風被害により海外へ渡航した人々の母村」調査は, ほぼ終了した. 台風常襲地帯が, 経済的立直しの為, 台風を契機に海外へ出国した例と考えられる. ただ, この地域では戦前より「海外出稼ぎ者」が多く, 戦後渡航が不可能な時期に台風を理由として, 海外移住を試みたとも考えられる. 「桜島よりの離村者に対する聞きとり調査」は, 鹿児島市内への移住者については, 離村者と残留者との間の感情的対立があるため, 調査に困難をもたしている. 大正3年の桜島爆発による離村者は, 対象者の高齢化と散逸のため, 当初の予定を変更した対象地域で実施している. この調査に関しては, 昭和63年度も継続して研究し, 調査を実施する予定である.
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