1988 Fiscal Year Annual Research Report
昭和前期美術教育における教育方法理念の研究ー美術教育学研究ー
Project/Area Number |
62510141
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
井上 正作 福岡教育大学, 教育学部, 助教授 (70159979)
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Keywords | 神のまこと / 日本道 / 美的労作 / 創造化育の道 / 模倣装置社会 |
Research Abstract |
新たな資料・証言の収集・分析によって次のようなことが一層具体的に明らかになった。師範学校の教育技術訓練を受けた当代の典型的な訓導西治公は、成城学園における一年間の研修以前西欧美術・文化・教育哲学の影響下にあったと考えられるが、彼に限らず昭和初期における労作教育思想の受容の日本的形態は、その後の圖畫手工教育の方法理念を規定することになる。即ち日本国独自の労作精神、自らの労作の中に神を、日本国を産出しようとするところの、祖先の労作体験と「神のまこと」から化育された自己内面の真実性、神の愛と人間の神に対する思慕心が一体となった「日本道」の精神、これに基づく日本国家創始の労作精神への立脚、合自然の労作、共同愛の労作、生活陶冶、霊的陶剣冶を方法とする圖畫手工教育における美的労作の実現が考察されることになる。即ち構想の作為苦悶が構成する全体美的観念が筋肉労作を導き、反省努力の表現製作による価値生産が美的陶冶、美的作品の生活化、多方面の労作の美化を実現するとした。図書監修官角南元一は、国民学校芸能科教育者の聊か心細い精神革命の不十分を叱って峻厳な自己批判を求めた。産霊(むすび)のみたまの現れとしての「創造化育」の道たる創造の原理、奉仕の原理、祭政一致の原理による芸術と合理随順性の一致、内なるものを磨き出す錬成、無我奉仕、没我創造、無の境地における日本的生活道といった方法理念に支えられた圖畫工作教育の実現を主張したが、これらは昭和前期特有のものというより今日の芸道教育の思想に通じる伝統的なものであり、個人個人の個性的な精神世界や独創性が評価されにくい巨大な模倣装置社会の精神構造を基盤としたものであることがわかる。この事実を日本民族の真実の一つと認め、ここから出発して現代美術教育における教育方法理念が「美的教育論」(H.Read)が差し示した方向において探求されなければならないのである。
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Research Products
(1 results)