Research Abstract |
本研究は社会的コンピテンスが統合保育を成功させる障害児側の主要条件であるとの認識に立ち, 障害児の社会的スキルの獲得の過程と社会的相互作用の促進方法の開発を目的とする. 被験者は私立保育園児2名(自閉傾向, 5歳男児, 多動児, 3歳男児)である. 観察期間は昭和62年4月〜昭和63年3月, 観察時間は午前9時10分〜午前11時40分で4場面(登園より設定保育以前, 設定保育, 設定保育後より給食, 社会的スキルの訓練)をVTR録画と行動観察を行った. 録画回数は原則として週一回, 計65回である. 結果. 現在はVTR録画と並行してその分析段階にあるが, 以下の事柄が指唆される. (1)多くの社会的相互作用は保母一障害児間, 障害児一障害児間, 健常児一障害児間の順序で出現する. 社会的相互作用の基礎的スキルはまず保母一障害児間で獲得させる必要がある. (2)社会的相互作用の開始者は保母から障害児へが圧倒的に多いが, 時間の経過や保母の積極的な介入(障害児の長所の強調と強化, 積極的な自己像の形成化, 自己効能感や動機づけの高め, 相互作用の仕方の演示, 相互作用を惹起させやすい場面. 課題の設定, やりとりの仕方を学ぶ小グループでの訓練)によって健常児から障害児への働きかけも増加する (3)障害児は健常児への応答性(身ぶり, 表情, 言語, 要求, 機能的コミュニーケションの諸手段等)の獲得と受容的態度が必要である. (4)健常児は時間経過とともに障害児への評価(言葉の発達, 長所の認識, ゲームや行事への参加に伴う仲間意識等)も肯定的・受容的に変化する. (5)保母は保育環境の操作(座席, 協同学習, 共同遊びや相互作用の機会の設定)を随時必要とする. 成果. 一部は「統合保育における障害児の社会的相互作用の促進」(三谷・西野), 「統合保育における一障害児の行動の分析」(西野・三谷), '88年日本保育学会発表投稿, さらに'88年日本教育心理学会, 日本特殊教育学会, 雑誌論文発表予定です.
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