1987 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62510157
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
竹田 旦 茨城大学, 教養部, 教授 (60015360)
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Keywords | 穀霊 / 祖霊 / チョサンタンヂ(祖先壷) / 納戸神 / 日韓比較民俗学 |
Research Abstract |
最近の考古学的所見によると, 北九州における稲作の起源は前4世紀に遡り, 韓国ではさらに1〜2世紀古いだろうという. すると, 日韓両国とも稲作をめぐる習俗にはきわめて古層に属するものが留められていると予想されよう. ここに穀霊祭祀の在り方に対して, 日韓比較民俗学の課題が設定される次第である. ところで, 近来韓国における「家神」信仰の実態が漸次解明されるとともに, 祖霊・穀霊に対する祭祀が論議されるようになってきた. とくに毎年秋新米を壷や甕などに入れ, 主婦が夫婦の寝室で祀る習俗が注目されている. それをチョサンタンヂ(祖先壷)などと呼び, 明らかに穀霊=祖霊と認識してきたのである. すなわち(1)神体としてのコメを(2)司祭者としての主婦が, (3)祭場として夫婦の寝室で, (4)祭器として中空の壷・甕などに入れて祀る習俗である. このような韓国の習俗に対応する日本の事例として, 「納戸神」信仰が挙げられる. 納戸神は主として島根・鳥取・兵庫の各県, 山陰地方に分布している. やはり(1)コメあるいは籾を, (2)主婦が, (3)夫婦の寝室たる納戸で, (4)中空の器たる藁俵に入れる祀るものである. 以上のように, 穀霊・祖霊祭祀をめぐって, 両国には類似している内容が多い. しかし詳細に検討してみると, 微妙な相違も少なくない. たとえば韓国ではコメ(とくに白米)を用いるのが一般で, それを食料として重んじているようなのに対し, 日本ではむしろ籾(とくに種子籾)を用いて再生産に期待を寄せているらしいのである. また日本の納戸神には祖霊性が希薄で, それが明白な韓国のチョサンタンヂとは対照的である. このような疑問を解くべく, 本年度は島根・鳥取両県の現地調査を通じて納戸神の全般的な様態を追究してみた. その結果, 籾から次第にコメ, しかも玄米から白米に変遷している状況が確認された.
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