1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62510157
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
竹田 旦 茨城大学, 教養部, 教授 (60015360)
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Keywords | 穀霊 / 祖先壷 / 祖霊 / 女性祭祀 / 納戸神 / 日韓比較民俗学 |
Research Abstract |
韓国の穀霊・祖霊祭祀の事例として、家神のチョサンダンヂ(祖先壷)を取り上げた。その祭祀の特徴は、(1)神体としてのコメを、(2)司祭者としての主婦が、(3)祭場としての夫婦の寝室で、(4)祭器としての中空の容器で祀る、という諸点である。これに対応するのが、日本の「納戸神」であり、とくに山陰地方でトシガミ(年神)を納戸で祭る習俗が注目される。島根・鳥取・兵庫・岡山の諸県ではトシダワラ(年俵)と称して籾を俵に入れ、年神を納戸で祭る。近来は籾俵を止め、玄米俵に改めた所も多く、一部には白米俵とする例もある。俵でなくて木の桶に白米を盛り、トシオケ(年桶)と呼んで年神祭りをする地方も分布している。 韓国の祖先壷と日本の納戸神を比較してみると、コメを中空の容器に入れて夫婦の寝室で祀る点は共通している。そのコメが韓国では白米であり、日本では籾を古態とし、さらに玄米から白米に変化している。籾には翌春再び生命を蘇らす再生観が含まれているのに、玄米・白米にはそれが認められない。容器としては、韓国では壷や甕、古くは俵・瓢・巾着・籠・笊・行李などであったのに対し、日本では俵以外は見られない。いずれも丸い中空の容器という点では一致している。司祭者としての主婦については、韓国ではきわめて普遍的で例外が認められない。日本でも納戸神を元来は主婦が祀ったと思われるのに、山陰地方の年神祭りは一家の家長が年男として奉仕している。そして、韓国では家神祭祀そのものが全般的に衰え、司祭者としての主婦の担当が減少している。日本では年神祭りも決して盛んとはいえないが、それよりも司祭者が早く主婦から家長へ転換したらしい。また日本では穀霊=年神=寝室(納戸)祭祀=男性祭祀という構造を採り、祖霊性が欠落しているのに対して、韓国では穀霊=祖霊=寝室祭祀=女性祭祀という構造で、祭日としての正月と再生観が含まれていないことに注目される。
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