1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62510167
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
佐藤 和彦 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (80013275)
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Keywords | 民衆運動 / 民衆生活 / 南北朝内乱 / 一揆 / 荘園村落 / 研究史 / 若狭太良荘 / 近江葛川 |
Research Abstract |
日本中世社会における民衆の、生産・生活・闘争などに関する従来の研究史を把握することにつとめるとともに、関連史料の調査、蒐集をおこない、さらに可能なかぎり、現地調査をおこないつつある。 現在の民衆運動史研究を代表する横井清「中世民衆の生活文化」(東京大学出版会 1974年)・「的と胞衣」(平凡社 1988年)、三浦圭一「中世民衆生活史の研究」(思文閣出版 1981年)、網野善彦「無縁・公界・楽」(平凡社 1978年)、「日本中世の民衆像」(岩波書店 1980年)・「日本中世の非農業民と天皇」(岩波書店 1984年)氏らの仕事が、第二次世界大戦前における西岡虎之助氏や柳田国男氏らの研究と密接にからみあい深化されていること、さらにはヨーロッパ中世史の研究法(いわゆる社会史的手法、たとえば、阿部謹也氏の「ハーメルンの笛吹き男」〈平凡社 1974〉)を摂取していることを理解した。 本年度は、南北朝時代から室町時代にかけて展開した民衆運動について、生活・生産・闘争などの分野を重視し、東京大学史料編纂所、京都総合資料館をはじめ、各県市の文書館、図書館などで関連史料の調査と蒐集をおこなった。民衆運動の展開した地域の調査に関しては、若狭国太良荘(現福井県小浜市)、近江国葛川荘(現滋賀県大津市)において主として聞き取り調査をおこなった。とくに、太良荘では、当該時点にかかわる三点(康永2年、永和元年、永享10年)の文書史料を発見した。しかしながら、文化財破壊の問題と関連して、中・近世社会にさかのぼって、民衆の生活・生産などの実態を追求することは困難な状況になりつつある。中世の民衆運動を総合的に理解し、その特質を解明する作業は、可能なかぎりすみやかに、隣接諸科学との連携を密にして、おこなうことが必要であろう。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 佐藤和彦: 戦乱の日本史(第一法規). 5-822-26 (1988)
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[Publications] 佐藤和彦: 中世民衆の世界(三省堂). 111-159 (1988)
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[Publications] 佐藤和彦: 歴史地名通信(平凡社). 24. 1-3 (1988)
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[Publications] 佐藤和彦: 民衆史と考える(校倉書房). 167-184 (1988)
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[Publications] 佐藤和彦: 彷書月刊(弘隆社). 4-12. 21-23 (1988)