1988 Fiscal Year Annual Research Report
米作単作地帯における巨大地主の生成過程に関する研究
Project/Area Number |
62510177
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
中山 清 京都女子大学, 文学部, 助教授 (30172472)
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Keywords | 割地制 / 藩財政 / 大地主 / 頚城地方 / 質地騒動 |
Research Abstract |
新潟県蒲原平野部および頚城平野部に展開した大地主制について、前年度に提起した諸問題を引き続き追及した。幕末期の長岡潘財政と今井家との関係について、まず、領主財政と密接な関係を持ちうるに至るまでの過程からみた地主的成長の基礎的学件として、(1)割地慣行地帯における金融活動と質地集積、(2)庄屋株の「東海道の宿場の数」ほどの集積とその意味、(3)米穀流通における地主作徳米の位置などについて整理を試みた。割地慣行下においては土地所持は軒前で表示され、その内容が村落によって異なるため、統一した数値で捉えることが困難であるが、天保〜嘉永期における急速な集積により約400町歩を所持する大地主に成長していたとみられる。所持の中心は長岡領であったが、長岡藩との財政、金融上の密接な関係は安政期から始まり慶応初年まで、藩財政運営の改革を伴ないながら展開される。幕府水原代官による水原町居住大地主からの長岡藩への金融の斡旋という注目すべき事象があり、その解決(返還)をめぐって今井家と長岡藩との関係が開始された。今井家が水原町居住大地主や寺泊、与板、地蔵堂などの在町の商人、地主と結んで準備した資金を藩に提供し、一方で長岡領蒲原郡巻・曾根両組の年貢米の一括払下げをうけるという構造である。前年報告したように総括的帳簿を欠くため、現在、「当座帳」「差引帳」を整理、集計中であるが、その作業により今井家の全経営とその中における長岡藩財政の位置づけが可能となろう。なお、頚城地方については著名な質地騒動時の地主的土地所有の展開状況の解明を試み、手作地主-名子体制から作徳地主-小作体制への過渡期にあったという見通しを得た。
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Research Products
(2 results)