Research Abstract |
年度当初, いままでの私の研究蓄積や収集資料を全面的に再検討した結果, つぎの二つの課題に重点を置いて, 研究をすすめることにした. 第一課題はハワイ駐在日本総領事館より, 外務省に報告された多数の領事報告資料を調査・収集・整理して, ハワイにおける日本人移民の実態や動向について, 明らかにすることである. 第二課題は, ハワイへの日本人移民の増加が, 日本国内に与えた影響について, 具体的に明らかにすることである. 第一課題を達成するために, つぎのことを実行した. (1)昭和62年3月までに, 私が外交史料館で調査収集した資料(全部マイクロフィルム)を焼付引伸し, 複製を作成する. (2)複製資料を整理検討し, 今後収集する必要のある領事報告資料の調査収集計画を立案する. (3)領事報告資料は, 国会図書館と外交史料館で, 領事報告資料の散逸部分を補充する目的で官報は, 九州大学中央図書館で, それぞれ収集することにした. 夏休暇・冬休暇・年度末休暇を利用して, 精力的に収集調査を行なった. その結果, 明治20〜30年代の領事報告資料の主要なものは, 大部分収集することができた. 第二課題は, つぎのような方法でとりくんだ. (1)日本政府の移民政策が, 移民卓越地域で, どのように具体化され実施されているかを, 広島・山口両県の町村役場文書の収集調査を通じて検証した. (2)殖民協会の機関紙『殖民協会報告』が復刻されたので, 全14巻を購入し, それを素材に, ハワイ移民の増大が, 殖民協会の成立に影響する課程を年表風にまとめる. 以上のように, 本年度は, 資料収集調査に重点を置いたため, 具体的な研究成果は乏しいが, 63年度には, 収集資料を充分検討吟味して, 論文として研究成果を公表する予定である. 資料の調査収集を通じて, 明治20年代のハワイ日本人移民史の体系化に, 明確な見とおしをもつことができたのが, 最大の成果であった.
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