1987 Fiscal Year Annual Research Report
冊封体制の解体と清末知識人の東アジア認識-台湾・琉球・越南・朝鮮問題を通して-
Project/Area Number |
62510196
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
西里 喜行 琉球大学, 教育学部, 教授 (70044914)
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Keywords | 台湾事件 / 琉球処分 / 分島問題 / 冊封体制 / 清国知識人 / 民族意識 / 国際意識 / 清国ジャーナリズム |
Research Abstract |
19世紀後半における東アジア諸民族の自己意識(民族意識)と世界意識(国際意識)の特質を解明するための予備作業として, 昭和62年度においては, 台湾事件・琉球問題をめぐる清国知識人の対応および清国ジャーナリズムの動向に焦点をあて, 関連文献・史料を購入・収集し, 分析・検討した. 1.台湾事件をめぐって. 近代日中関係史の起点とされる台湾事件については, 従来, 主として日本側からの外交史的アプローチが試みられている. 本研究では, (1)清国当局の台湾事件への対応の検討に加えて, (2)清国ジャーナリズムにおける台湾事件の受けとめ方の検討に主力を注いだ. (1)の面では, 册封体制の保持という共通の前提をふまえながらも, 清国知識人のなかに台湾事件への対応をめぐる対立が存在したこと, 対立の背景には, 台湾事件と伊犂問題の優先順位をめぐる論争の外に, 清国の現状に対する認識(自己意識)の相違が存在したことも確認された. (2)の面では, 逸早く台湾へ特派員を派遣した上海の申報が逐一事件の推移を報道・論評し, 香港の循環日報とともに, 清国当局よりも先に台湾事件に注目し, より敏感な反応をしめしたこと, 明治政府の台湾侵略を批判する論調のなかから「中国ナショナリズム」が芽生えはじめたことなどが確認された. 2.琉球問題をめぐって. 琉球処分前後に琉球問題を論じた清国知識人として, 李鴻章・何如璋・黄遵憲・劉坤一・張之洞・馬建忠・王韜・王之春・姚文棟などが挙げられる. 彼らの琉球問題をめぐる発言内容のすべてを検討の対称に据えながらも, 当面, 何如璋・黄遵憲・王韜の琉球論に焦点をあて, 国権主義的外交論を展開したとされる何如璋が琉球分島問題への対応において, 最終的には分島条約案の容認へ傾斜しつつあったことを確認した. この分野での作業は, 清国ジャーナリズムにおける琉球問題の取り上げ方と併せて, 今後に引き継がれるべき課題である.
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Research Products
(2 results)