1987 Fiscal Year Annual Research Report
第一次大戦前のオーストリア・ハンガリー帝国主義と国有鉄道
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62510201
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
佐藤 勝則 茨城大学, 人文学部, 助教授 (40106737)
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Keywords | 私鉄原則 / 鉄道建設認可 / 利子保証 / 国家財政 / 金融市場 / 二部門編成の再生産構造 / 国内市場形成 / 陸軍機動力 |
Research Abstract |
本年度は基礎資料の収集・整理と並んで研究視座の確定のために本邦における先行研究の論点整理も試みた. その際我々が注目したのは以下の業績である. 明治期の田口卯吉の鉄道論, 信夫清三郎「日本の資本主義と鉄道」『改造』1948年, 鈴木武雄『帝国主義段階における国家資本の役割と推移』1949年, 島恭彦『日本資本主義と国有鉄道』1949年等の古典的著作の系列. また近年における鉄道史研究としては特にドイツとの比較を意識して, 北条功「ドイツ産業革命と鉄道建設」高橋幸八郎編『産業革命の研究』1966年所収, 松井坦「ドイツ帝国主義と国有鉄道」1977年度歴史学研究会大会報告, 杉原違「ドイツ帝国主義における内政と外政-ドイツ帝国主義のバグダード鉄道政策に関する-考察-」川本・箸方・高橋・大月・肥前編『比較社会史の諸問題』1984年所収を参考とした. その結果, 我々の研究テーマの解明のためには以下のような視座が必要であることが明らかとなった. (1)私鉄原則下での鉄道建設過程におていは, 旧封建勢力や前期的資本の資本投下先として国家の建設認可・利子保証による鉄道建設事業が位置づけられていたこと(資本市場形成と有償農民解放事業との関連)(2)また後進国では鉄道建設のための資本輸入乃至技術導入が不可欠であり, まず内外の金融市場との関連や近代的国家財政との関連に着目すべきこと. さらに原料・半製品・完成品・農林畜産物輸送と2部門編成との関連をおさえることによって, 再生産構造と国内市場形成の過程が解明されうること. (3)普墺戦争敗北後の国有鉄道政策においては, 陸軍の動員, 機動力形成という軍事的要因が一定の意義をもつこと. 次年度は, 日本帝国主義の南満州鉄道経営との比較において, オリエント鉄道, セルビア・ブルガリア国有鉄道との利害対抗を把握していくための基礎資(史)料を収集・整理するとともに, 上記の諸論点を実証的に解明していくこととしたい.
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Research Products
(1 results)