1987 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62510214
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
見市 雅俊 中央大学, 文学部, 助教授 (30027560)
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Keywords | 伝染病 / 都市計画 / 田園都市 / 公衆衛生 / 都市化 / アメニティ / 健康 |
Research Abstract |
都市と農村のイギリス的な空間配置の生成を社会史の観点より辿ろうとするのが本計画のメイン・テーマである. そして具体的には都市公衆衛生の展開に焦点をしぼることにした. この場合, 公衆衛生とは広く都市環境全体の改良を意味し, 従って, 都市計画と密接にかかわってくる. 今日, 都市計画というと, 健康の問題もふくまれようが, それよりも住民のアメニティーが中心的な課題になるけれども, それは19世紀末の細菌学説の確立とそれ以降の医療の進歩によって伝染病の問題が克服された結果であり, それ以前の段階においては, 都市の環境問題と都市住民の健康, 特に, 伝染病の問題とは密接不可分のものとしてとらえられていた. そして, 農村は, 劣悪な都市生活のありようを批判する場合の, ひとつの基準となったのだった. 特にイギリスでは都市化のテンポが他の国々よりも早かったために, 非常に早い段階からそうした都市批判の潮流が形成されていったようにおもわれる. そして衛生対策をふくむイギリスの都市計画は, 都市をできるだけ都市らしからぬものにしようとする, パラドタシカルな形態をとることになった. その最も象徴的なものが田園都市計画であり, 田園郊外と呼ばれる郊外住宅地の発展であった. 今年度は17世紀から19世紀までのイギリスにおける都市衛生の思想と実践に関係する文献の収集と, その読解作業をおこなった. 20世紀については文献の収集だけにとどめた. また, 都市化と伝染病の関係について, 最近の欧米における研究動向をサーヴェイし, それを研究ノートとしてまとめて発表した. 次年度は以上の基礎作業をふまえて, 17世紀から19世紀のイギリス都市衛生の社会史を概観した研究書の執筆にとりかかる予定である.
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