1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62510214
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
見市 雅俊 中央大学, 文学部, 助教授 (30027560)
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Keywords | コレラ / ペスト / 公衆衛生 / 都市空間 / 人口動態 / 伝染病 / 栄養状態 / 上下水道 |
Research Abstract |
1.今年度は研究の取りまとめ作業に重きをおいた。補助金は主に他大学への雑誌論文のコピー依頼に充当された。前年度と同じく史料整理を進める一方、研究の成果を発表する準備にも着手した。そのうち論文をひとつすでに発表し、さらに岩波書店が企画中の世界史シリーズに入る予定の論文も完成し、加えて現在、三本の論文を準備し、そのかたわら19世紀イギリス都市衛生史全般を扱う本の執筆作業も開始した。前者は来年度の前半までに書き上げ、後者は平成二年春には刊行にこぎつける予定である。 2.ヨーロッパ、とくにイギリスの都市史を病いの次元から基本的に再検討することにこの研究の焦点は完全にしぼられた。これまでの日本での西洋史研究では自然現象や伝染病などを独立変数とみるような見方はそもそも邪道だとする傾向が強かった。都市史でも下層民の病いの状況が語られることはあっても、それは社会構造上の問題以上のものではなかった。しかしながら病いの視点からみれば都市はその空間に蔓延する伝染病によって農村より流入する過剰人口を処理する「人類の墓場」だった。18ー19世紀は都市の上・中流階級が「病気のアンシャン・レジーム」から解放される時代であった。そのために「清潔」な中流階級と「不潔」な一般大衆との衛生面での「階級対立」が激化した。しかし公衆衛生制度が確立されてくると社会全体の衛生水準が急速に改善されることになる。 3.病いと衛生の視点からイギリス都市の歴史を以上の三つの段階に区分し、19世紀、とくにコレラの流行に中心をおいて来年度、研究の総まとめをおこないたい。
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Research Products
(1 results)