1987 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62510217
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Research Institution | Shigakukan University |
Principal Investigator |
小崎 閏一 鹿児島女子大学, 文学部, 助教授 (40101406)
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Keywords | 十字軍 / 叙任権闘争 / 隠修士運動 / 巡礼 / 贖宥 / ユダヤ人 / 破門 / 教会法 |
Research Abstract |
1. 当初の計画通り, 必要な備品(外国図書59点)を購入し, 広島・名古屋・東京・京都へ出張して複写により資料を入手し, 研究の遂行に活用した. また消耗品等についても効果的な活用を図り, 研究費の適正な執行を心がけた. 2. 研究実施計画に沿って課題の解明に努め, 以下の如き成果を得た. (1) 第1次十字軍に対する人心の反響は提唱者ですら予期しえなかったほどのものであったが, その背景には, 11世紀後半における隠修士運動と巡礼熱の高揚のあったことが強調されねばならない. 十字軍そのものが一種の巡礼として理解されたし, 第1次十字軍の勧説に最も貢献したピエールダミアンとロベール・ダルブリッセルは, ともに隠修士であった. (2) 第1次十字軍の初期段階において, 北フランスと南ドイツで発生したユダヤ人迫害の実態を究明し, 論文として公表した. (3) 叙任権闘争の過程でドイツ皇帝と熾烈な抗争を続けたローマ教会は, 必然的にフランス国王との友好関係を維持する基本方針を守ろうとした. ところが国王フィリップの再婚は, 姦通・近親相姦という, 改革教会としては容認できない教会法上の難題を提起するところとなり, ここから教会法学者イヴを軸にして, フランス国王とローマ教会との対立が生じた. 種々の妥協の試みにもかかわらず, 結局, ローマ教皇はフランス国王を破門した上で十字軍を宣言することとなった. この一連の政治関係を仔細に分析することによって, 教皇ウルバヌスの十字軍計画の真意を究明しようとしているが, この課題は次年度においても継続して検討される. なお合わせて, 教会法学者イヴ(シャルトル司教)の十字軍に対する極めて慎重な(否定的とすら言える)態度についても検討を予定している.
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