1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62510236
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊井 春樹 大阪大学, 文学部, 助教授 (50036175)
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Keywords | 源氏物語 / 青表紙本 / 大島本 / 飛鳥井雅康 / 良鎮 / 一条兼良 / 花鳥余情 |
Research Abstract |
本研究は、将来的には『源氏物語』本文の再建を目ざすもので、その一環として大島本源氏物語(写53帖、古代学協会蔵)を取りあげ、その基礎的調査を通じて定家本(青表紙本)の実態を明らかにするのが目的である。以下、今年度の成果について箇条書きにして示す。 1)大島本源氏物語は、『源氏物語大成』(池田亀鑑編)の底本となり以後青表紙本のもっともすぐれた本文として利用されてきた。しかし、翻刻や校正のミスがあり、それをそのまま使用しているのが現状である。大島本と厳密に校合するとともに、翻字方法の問題点についても明らかにした。 2)大島本には、書写者の飛鳥井雅康ほか、伝来の過程で書き込まれた補入・ミセケチ等が数多くある。『源氏物語大成』では、それら訂正された本文だけを採用して正統的な青表紙本とする。しかし、訂正前の本文は青表紙本であっても、河内本によって校合されているとか。本来は別本の本文が混入していた実態などを知ることができた。このような事実からすると、大島本を純正な青表紙本とするのには疑問も生じて来ざるを得ない。 3)大島本の行間、余白に書き込まれた詳細な注記の性格を見ると、兼良の『花鳥余情』を継承していると知られる。これは良鎮が父兼良の説を架蔵本に書き入れ、その本が大島本を所蔵する吉見正頼に伝来したこととかかわる。そのもとで、大島本に良鎮本の注記を転記した結果である。 4)大島本の桐壺巻はまだ活字化されていないので、そのテキストを作成した。また、刊行中の『源氏物語別本集成』に、底本とした陽明文庫本と校合し、その違いをすべて明らかにした。
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[Publications] 伊井春樹: 詞林. 第3号. 1-13 (1988)
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[Publications] 伊井春樹: 国語と国文学. 65巻8号. 16-30 (1988)
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[Publications] 伊井春樹: 詞林. 第4号. 1-15 (1988)
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[Publications] 伊井春樹,伊藤鉄也,小林茂美: "源氏物語別本集成 巻一" 桜楓社, 1-685 (1890)
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[Publications] 森一郎,伊井春樹: "校注桐壺" 和泉書院, 1-60 (1890)